執筆:歯科医師 河合良治
念願のインプラントを入れたのに、その後もげてしまった!なんてトラブルがまれにあります。今回はインプラントがもげてしまう理由やインプラント周囲炎についてお話ししていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
インプラントが抜ける?どの部分が取れたか確認
インプラントは全部で3つの部品から構成されています。そのため「インプラントがとれた!」と感じたらまずはどの部分が取れてしまったのか確認しましょう。
まずは基本となるインプラントの構造についてお話ししていきます。
インプラント体(フィクスチャー)
顎の骨に埋入するインプラントで最も重要な部分が「インプラント体(フィクスチャー)」です。歯根の部分にあたり、ネジのような形になっています。顎の骨に埋め込むことでオッセオインテグレーションと呼ばれる結合を獲得させて固定し、ご自身の歯のように使えるようにしていきます。
インプラントを骨に固定するには以下のような条件が必要になります。
① インプラント材料が生体不活性あるいは生体活性材料であること
② 骨に発熱等の侵襲を与えずインプラント埋入窩の骨形成を行うこと
③ 骨の治癒期間中に過大な負荷がかからないこと
④ 初期固定が得られていること
⑤ 細菌等の感染がないこと
そのためインプラントが根本から抜けてしまっている場合は上記の条件が揃わずにインプラント体がうまく骨に結合しなかった、もしくはインプラント周囲炎が進み抜けてしまった可能性があります。
アバットメント(支台)
アバットメントはインプラント体と上部構造(歯の部分になるところ)を繋ぐ役割や、上部構造の向きを決める役割があります。
小さなパーツで基本的にここだけ外れるということはあまり見られず、上部構造と一緒に外れたりインプラントごと外れてしまうことがほとんどです。アバットメントの材質はチタン、チタン合金、ジルコニアなどで作られています。
上部構造(人工歯)
上部構造はいわゆる歯の部分、お口の中で見える部分になっています。人工歯と呼ばれ上部構造が入ることで物を噛めるようになります。
上部構造の材質はレジン(樹脂)、セラミック(陶器)、セラミックとレジンを混ぜたハイブリッドセラミック、金合金、ジルコニアなど様々です。患者さんの機能やお口の状態に合わせてベストなものを選択していきます。
インプラント治療後にこの上部構造だけがもげてしまうことがあります。連結部分から外れてしまった場合は、再び付けることが可能ですが、破折など問題がある場合は作り直しが必要になります。
参考:テーマパーク8020
インプラントが取れた原因「インプラント周囲炎」
インプラントがもげてしまう原因は様々ですが、特に怖いものとして知られているのが「インプラント周囲炎」です。
インプラント周囲炎とは簡単に言うとインプラント周りで起こる歯周病です。インプラント体と骨の間にはわずかな隙間(ポケット)があるのですがそこで歯周病菌が増殖してしまうと、歯ぐきに炎症を起こし毒素を出しながら周りの骨を溶かしていきます。
インプラント周囲炎は初期症状がそこまでないために、気づいた時には手遅れになっていた!インプラントがもげてしまった!ということもありえます。
そんなことにならないためにもお口の中の歯周病菌を減らし、毎日のホームケアを丁寧に行い、定期的な歯科医院でのメンテナンスに通うようにしましょう。
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まとめ
今回はインプラントがもげてしまう原因やインプラントの構造についてお話ししました。インプラントがもげてしまうことはまれなケースですが、インプラント周囲炎などトラブルを起こし症状が悪化してしまうと根本からもげてしまう原因にもなります。
インプラント治療後、いつまでも健康に長持ちさせるためにもホームケアに力を入れ、必ず定期的なメンテナンスを歯科医院で行いましょう。インプラントは一度入れたらお終いではありません。長持ちさせるためにもお手入れを忘れずに行なっていきましょう。
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