執筆:歯科医師 河合良治
歯を失ってしまった場合の選択肢として、入れ歯やブリッジそしてインプラントが挙げられます。
最近ではインプラントが多くの歯科医院で取り扱われるようになってから以前よりも選択しやすい治療法として知られてきました。しかし、中にはインプラントは長持ちしないのでは?と考える方もいらっしゃいます。
今回はインプラントは長持ちするのか?また長持ちさせるために大事なことについてお話ししていきます。
インプラントは長持ちする?
結論から言いますと、インプラントは患者さんのお口の環境がよく、メンテナンスさえしっかりできていれば自身の歯と同じくらい長持ちします。人によっては一生使っていただける方もいますし、逆にメンテナンスを怠ってしまったことでインプラントが抜けてしまったという方もいます。
インプラントの寿命は、埋入時の条件や患者さんの口腔内・生活環境によって大きく異なりますが、厚生労働省の発表によるとインプラントの生存率は上顎で90%、下顎で約94%です。
また、骨移植が必要なケースや抜歯後にすぐインプラントを埋入したケースでは87~92%程度の生存率となります。
引用:厚生労働省
次ではインプラントが長持ちする条件についてお話ししていきます。
インプラントが長持ちする条件
インプラントが長持ちする条件はさまざまです。どれも大事なことで、これらが全て揃っていると長い間ご自身の歯のように使っていただけます。
十分な骨の量がある
インプラントを埋入する上で最も重要なことは、埋入する部分に十分な骨の量があることです。骨の量がないとインプラン体がしっかりと結合しないために埋入後もすぐに抜け落ちしてしまう原因になります。
骨量が少ない方は、事前に骨移植を行い骨量を増やす処置が必要になるため治療に時間がかかる、インプラントの生存率がわずかに下がるということを理解しておきましょう。
歯周病が進行していない
インプラントと相性が悪いものが「歯周病」です。インプラント埋入後も歯周病菌がお口の中に多くいると、インプラントと骨の間のポケットで菌が増殖し「インプラント周囲炎」を起こしていきます。
進行してしまうと通常の歯周病と同じようにインプラントが抜けてしまう恐れもあるため、治療前に歯周病がある方はまずそちらの治療からスタートする必要があります。
またインプラント治療後も歯周病にならないように、徹底したホームケアと定期的な歯科医院でのメンテナンスが必要です。
参考:日本口腔インプラント学会
喫煙習慣がない
インプラントと相性の悪いものとして挙げられるものが「喫煙」です。タバコに含まれるニコチンは血管収縮作用があり、血流を阻害してしまうことで歯肉に酸素や栄養を届けることが難しくなります。
そのため、インプラント手術の際には傷口の治りが悪くなる、感染症を起こしやすいといったリスクが高くなり、埋入後もインプラントが骨に定着しにくくなり最悪抜けてしまうといったこともあります。
インプラントを考えている患者さんには基本的に禁煙をおすすめしますが、難しい場合は徐々に本数を減らしていきお口の状況を確認しながらインプラントを行うこともあります。
強い食いしばりや歯ぎしりなどがない
普段から強い食いしばりや歯ぎしりをしてしまうこともインプラントが長持ちしない原因の一つになります。
食いしばりや歯ぎしりをしていると、その歯に100kg以上もの力が加わることになります。そんな力が日常的にかかっているとインプラントが埋まっている骨にも負担がかかったり、インプラントが破折してしまう原因にもなります。
歯ぎしりや食いしばりがあるからといってインプラント治療ができなくなるわけではありませんが、インプラントを長持ちさせるためにもナイトガードを使用したり、矯正を行うなどして症状を改善させる必要があります。
ご自身で適切なホームケアができる
インプラント埋入後は患者さんによる適切なホームケアが重要になってきます。インプラント周りにプラークを溜めないよう、そしてお口の中に歯周病菌や虫歯菌を増やさないようにしましょう。
通常の歯磨きと併用してフロスや歯間ブラシ、タフトブラシなどを使ってインプラント周りを常に清潔にしておきましょう。
定期的なメンテナンスを歯科医院で受ける
インプラントを一度入れたらメンテナンスは切っても切れない関係になります。定期的に歯科医院でインプラントの状態をチェックしてもらい、プロによるクリーニングを受けましょう。
ご自身では気づけない異変や歯周病の進行の有無を確認することができ、また落とし切れない汚れを落としてもらえます。
まとめ
今回はインプラントは長持ちするのか?というテーマについてお話ししました。インプラントはお口の環境が良好でホームケアやメンテナンスをしっかりと続けることにより長く使っていただけます。
逆にインプラントと相性の悪い生活習慣やお口の習慣がある方は、まずそちらの改善が必要になります。インプラントをお考えの方は、まず一度歯科医院でカウンセリングを受けてみましょう。
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