執筆:歯科医師 河合良治
入れ歯やブリッジに続き、歯を失った部分を補う治療としてインプラントが主流になって来ています。技術が進歩し、多くの歯科医院でもインプラントを取り扱っていることから以前よりも身近な存在になってきました。
しかし、インプラントは外科手術を必要とする治療になるため副作用やリスクについて理解しておきたい方も多いでしょう。副作用という言い方は正しくはないかと思いますが、イメージしやすいとおもうので、ここではそのままの表現を使わせていただきます。それでh、インプラントの副作用・リスクについて詳しくお話ししますので、ぜひ参考にしてみてください。
インプラントの副作用・リスク
ここではインプラントの副作用やリスクについてそれぞれ説明しています。軽度なものから重度のものまでありますのでしっかりと理解しておきましょう。
インプラント治療後の腫れや痛み
これはインプラント治療後に起こりやすい副作用です。インプラント治療では歯ぐきを切開し、顎の骨にインプラント体を埋入します。
そのため、術後は痛みや腫れを伴うことが多いです。
しかし、必ず抗生物質と痛み止めを処方されますので医師の指示通り服用することで腫れや痛みを最小限に抑えることができます。
術後の感染症
インプラント治療後はほとんどの場合正常な治癒形態をとりますが、中には術後の免疫力の低下や口腔内の不衛生などさまざまな理由でインプラント部位の術後感染を起こす可能性があります。
感染症を起こしてしまった場合は、適切な抗生剤の服用と感染部位の洗浄を行います。
参考:日本口腔インプラント学会
神経を傷つけてしまう恐れ
特に下顎にインプラントを入れる際に起こりやすい副作用として注意されていることが神経を傷つけてしまうことです。
下顎には、下歯槽神経と呼ばれる大きな神経が走っており、これを傷つけてしまうと副作用として知覚麻痺などを起こしてしまいます。
近年ではCTが一般の開業医にも普及してきたことにより、画像から立体的に診断をすることが可能になっています。事前にレントゲンやCT撮影を行うことで、神経との距離を把握しこのような事態が起きないように処置を進めていきますが、リスクとしては0ではないことを理解しましょう。
上顎洞へ貫通してしまう恐れ
上顎洞は、顔の頭蓋骨内に位置する空洞です。鼻の両側に広がり、鼻腔と繋がっています。
上顎のインプラントを行う際、まれに上顎洞に貫通してしまうことがあります。気づかずに感染を起こしてしまうと上顎同炎などを起こす可能性があるため注意が必要です。
引用:がん研究有明病院
インプラント周囲炎
インプラントの副作用として最も起きやすく、注意しなければならないことが「インプラント周囲炎」です。簡単に言うとインプラント部分に起こる歯周病です。
インプラントと結合されている骨の間には、通常の歯周ポケットのように隙間が存在します。そこで歯周病菌が繁殖することで炎症を起こし、インプラント周囲炎を起こしていきます。
インプラント周囲炎が進行した場合は通常の歯周病と同じように顎の骨を溶かしていき、最終的にはインプラントが抜けて落ちてしまうこともあります。
インプラント歯周炎を防ぐには適切なホームケアと定期的な歯科医院でのメンテナンスが重要になります。
参考:日本臨床歯周病学会
こちらの記事もおすすめ:インプラント_メンテナンス難しいの記事を貼る
インプラントと骨の結合ができない
稀なケースですが、インプラント埋入後、何かしらの理由でインプラントと顎の骨がうまく結合しないといった副作用が見られます。
インプラントは骨に結合してこそ、ご自身の歯のように使っていただくためには結合がうまくいかないとインプラントを使うことはできません。
結合がうまくいかない理由はさまざまで、術前の準備不足、ポジショニングの間違い、患者さんの骨質、強い歯軋りや食いしばり、先天的な体質、喫煙習慣や服用薬の影響が挙げられます。
インプラントを成功させるためには
インプラントを成功させるためには、もちろん歯科医師の診断力と技術が必要になります。インプラント治療を受ける場合は経験豊富で事前にしっかりとカウンセリングを行なっている医院を選ぶようにしましょう。
また患者さん側の努力も必要になります。お口の中にいる歯周病菌などの悪い細菌を減らし健康な口腔内にしておくこと、喫煙習慣がある場合は禁煙を始めることなど双方の努力があってこそインプラントは成功するのです。
まとめ
今回はインプラントの副作用やリスクについてお話ししました。術後の腫れや痛みなど軽度なものから、インプラント周囲炎や神経を傷つけてしまうなど重度のものもあります。
しっかりと副作用を理解しておき、不安なことがあればなんでも歯科医師に質問しましょう。
後悔しないインプラント治療を受けるためにも、カウンセリングや検査の時点で疑問を無くしておきましょうね。
こちらの記事もおすすめ:インプラント手術の際の食事について手術後の食事はいつからOK?