執筆:歯科医師 河合良治
インプラントを検討している方の不安材料として、インプラント治療後のメンテナンスが難しいのではないか?ということも一つあるのではないでしょうか?
今回はインプラントのメンテナンスについてお話ししていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
インプラントのメンテナンスは難しい?
結論から言いますと、インプラントのメンテナンスはそこまで難しくありません。では簡単に長持ちさせられるかというとそうではありません。なぜなら
ここが一番のポイントですが、虫歯や歯周病とちがい自分ではインプラント周囲炎に気づきにくいということです。
ですからメンテナンスを怠ってしまうと、こういうトラブルを起こしやすくなりますのでメンテナンスは必須です。
インプラントのメンテナンス方法としては主に2つの方法があり、どちらもしていただくことが必須になります。
まず、1つ目が患者さんご自身で行なっていただくホームケアです。そしてもう一方が歯科医院で行うプロフェッショナルケアです。
①患者さんご自身が行うホームケア
②歯科医院で行うプロフェッショナルケア
以下でそれぞれ詳しくお話ししていきます。
インプラントのメンテナンス方法
ここではインプラントの2つのメンテナンス方法をご紹介します。
患者さんによるホームケア
最も大事なメンテナンスは患者さんご自身によるホームケアです。ホームケアは毎日していただく必要があり、他の歯よりも少し丁寧に、繊細に、インプラント部分のお掃除をしていただけるとインプラントが長持ちします。インプラント体には、歯牙と違って歯根膜という組織がありませんので、免疫力がやや弱いという傾向があります。
具体的な方法は、あなたのお口の状況によりやや異なりますが、大事なことはずばり1つで、あとの3つはその補助的なものです。
その大事なことは、
虫歯や歯周病になってしまう原因は細菌によるものですから、細菌をしっかりと分解すること、落とすことが重要です。どんな高級な歯ブラシを使っても、どれだけ時間をかけて手入れしても細菌が残っていては、管理することは不可能なのです。
(当医院では予防プラグラムでこのことをあなたと徹底的に身につけていただきますので、インプラント後も自信を持って管理してしていただけます。)
そのためには、
①適切な歯ブラシを使用すること
インプラント部分は毛先の細くなったテーパードタイプの歯ブラシがおすすめです。ヘッド部分は小さめで動かしやすい歯ブラシにしましょう。
毛の硬さは普通〜柔らかめがいいです。固めの毛は歯茎を傷つけてしまう恐れがあるため避けましょう。
また、電動歯ブラシを使用するのもおすすめです。微細な振動で細かい汚れも落とすことができるので、上手く使うことで手磨きよりも汚れを落とすことができます。
しかし電動歯ブラシは使い方にコツがいるため、一度歯科医院で使い方を教わるのがいいでしょう。
②清掃補助具を併用すること
歯ブラシだけでは全ての汚れを落とし切ることは不可能です。
そこでおすすめなのが歯間ブラシやフロス(糸ようじ)、タフトブラシを併用することです。歯間ブラシはインプラントと隣の歯のスペースが広い場合、フロスは歯間部分が狭い場合に使用してください。
歯と歯の間は汚れが溜まりやすいですが、歯ブラシで除去することが難しいです。歯ブラシの前、後どちらでも大丈夫ですので寝る前に1回だけでも歯間ブラシやフロスをする習慣をつけましょう。
また、毛束が1つのタフトブラシもインプラントのお掃除には有効です。特にインプラントの根本部分や義歯を支えているインプラントの周りなどはタフトブラシで綺麗にしましょう。
参考:日本口腔インプラント学会
③適切な歯磨き粉やマウスウォッシュを選択する
これは、おまけ程度のことですから、スルーしてもらってもかまいません。
歯磨きをする際に歯磨き粉を使用する方がほとんどだと思いますが、歯磨き粉も適切なものを選択する必要があります。一番気をつけていただきたいことが、「粒々の粒子(研磨剤)が入った歯磨き粉を使用しないこと」です。
粒々の研磨剤は口腔内で溶けることなく、お口の中に残ります。粒々がインプランの周りにくっついたり、歯周ポケットの中に入りこみ残留しさらなる汚れをくっつけてしまうことにもなります。
できるだけ研磨剤の少ない「低研磨」の歯磨き粉を選ぶようにしましょう。また、インプラントについて調べている方はフッ素はインプラントと相性がよくないと目にしたことがあるかもしれません。
しかし、これは高濃度のフッ素がチタンの材料でできたインプラントに長時間接していることで腐食が起きるためだと昔言われていました。
しかし最近の研究では、市販の歯磨き粉に含まれるフッ素濃度ではインプラントに影響しないことがわかっており、逆にフッ素入りの歯磨き粉を使用することで虫歯予防にもなるため、インプラントが入っている方にも積極的にフッ素入りの歯磨き粉をおすすめしています。
マウスウォッシュも使用することでお口の中の細菌数を減らすことができるため、特に歯周病菌が多い方は使用するといいでしょう。歯科医院では「コンクール」と呼ばれるマウスウォッシュをおすすめしています。殺菌力が高く、インプラント後の口腔内清掃にもおすすめです。
歯科医院でのプロフェッショナルケア
患者さんのホームケアと同じように重要なメンテナンスが定期的な歯科医院でのプロフェッショナルケアです。
3ヶ月〜半年に1回ほど定期検診として来ていただき、インプラントの状態やお口の状態をチェックしクリーニングや必要な処置を行います。ここでさきほど説明したご自身ではわかりづらいインプラント周囲炎のチェックを行います。
具体的にすることは、インプラント部位のポケット測定、チェック(目視やレントゲン撮影)、クリーニング、歯磨き指導などです。ホームケアだけでは落としきれない汚れを落としてもらい、定期的にレントゲンで骨とインプラントに問題がないかを確認します。
歯科医院でのチェックをこまめにしている患者さんは、メンテナンスをしていない患者さんにくらべてインプラントがグッと長持ちします。特に歯周病のリスクが高い患者さんは、必ず定期的に歯科医院でメンテナンスを受けるようにしましょう。
まとめ
今回はインプラントのメンテナンスは難しいのか?についてお話ししました。メンテナンスは難しいことはなく、日々のホームケアと定期的な歯科医院でのメンテナンスを行なってもらうことが重要になります。
インプラントは普通の歯牙とかちがい免疫力が劣ることを理解していただくことが大切です。
どれも難しい技術などは入りませんが、毎日コツコツ継続してケアを行うことでインプラントが長持ちします。インプラントについて不安なことがあれが気軽に歯科医院でも相談してみましょう。
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