執筆:歯科医師 河合良治
歯を失ってしまった場合にブリッジや入れ歯に次いで選択される治療法のインプラントですが、他の2つの方法に比べて大きく違うところが外科手術が必要になることです。
手術が必要と聞くと痛みや術後の腫れについて気になる方は多いのではないでしょうか?今回はインプラント治療後の腫れについてお話ししていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
インプラントの手術後は腫れる?
結論から言いますと個人差により大きく異なります。多少なりとも腫れたり、腫れてるような感覚がすることが多いです。インプラントは外科処置を行うために、身体の免疫反応が起こり、腫れることがありますが、これは通常の反応です。
しかし、顔が大きく腫れてしまうようなケースは稀で、なんとなくほっぺたがぷっくりしているような感じの腫れがほとんどと言えるでしょう。
インプラント後の腫れが強く出やすいのは術後翌日から3日間ほどです。1週間も経てば通常の状態に戻ることがほとんどですが、人によっては青タンのようなもの患部側のほっぺたに出ることがあります。
また、腫れる具合はインプラントの埋入本数や患者さんの体質、術後の経過などによっても大きく変わってきます。
以下でインプラント治療後に腫れやすいケースをいくつかご紹介していきますので、参考にしてみてください。
インプラントで腫れやすいケース
ここではインプラント手術後に腫れやすいケースについていくつか紹介していきます。
免疫反応・炎症反応が強くでる方
インプラントのオペは歯ぐきなどの歯周組織など体の一部を傷つける行為になります。そのため、術後は体が治癒や感染予防を行うために免疫反応や炎症反応が起こります。
この免疫反応・炎症反応が強くでる方は、患部の腫れが出やすい傾向にあります。以前に抜歯をした際に強い腫れが出たという方は、もしかしたらインプラント後にも腫れが出る可能性があるかもしれません。
術後に患部の感染が起きた
インプラントの手術後に稀ですが患部に細菌が入り術後感染を起こすことがあります。そうすると、同じく免疫反応や炎症反応が強く起こるために腫れやすくなります。
感染が起こった場合は、患部の掻爬(そうは)や抗生物質の投与を行い感染を抑える処置を行います。
術後の感染を起こさないためにも、処方された薬の服用や口腔内の清潔を保つなど徹底しましょう。
インプラントの埋入本数が多い
インプラントを埋め込む本数が多ければ多いほど、傷の面積が増えるため患部が腫れやすくなります。そのため、数が多い場合は数回に分けてオペをするなど、患者さんの状態に合わせて治療が進められていきます。
インプラント周囲炎
インプラントを埋入した後というより、しばらくした後に起こりやすいトラブルとして「インプラント周囲炎」が挙げられます。歯でいう歯周病がインプラント体にも起こるのです。インプラントとその周りの顎の骨には少量の隙間があり、その隙間に歯周病菌などの細菌が増殖してしまうことで、インプラントの周囲に炎症を起こしてしまうのです。
進行してしまった場合、徐々に顎の骨が溶かされインプラントが抜けてしまうこともあります。インプラント周囲炎が急速に進行した場合は、患部が腫れるなどの症状が出ることもありますが、何も症状がなく進行する場合もありますので、歯科医院での定期的なメンテナンスが必須になります。
参考:日本口腔インプラント学会
インプラント後の腫れを抑えるためにできること
インプラント後の腫れを抑えるために患者さん自身ができることについてお話ししていきます。
口腔内を清潔に保つ
インプラント術前術後から口腔内を清潔に保つことはとても重要なことです。お口の中に歯周病菌などの細菌量が多いと、インプラントを入れた後にインプラント周囲炎を起こしやすくなり、せっかく入れたインプラントが抜けてしまった…なんてことになりかねません。
インプラントの治療前は丁寧なホームケアを心がけお口の中の細菌数を減らしておきましょう。また術直後は患部の歯磨きはできませんので、マウスウォッシュなどでお口の中を清潔に保ち、傷が治ってきたらしっかりと歯磨きをするようにしてください。
ホームケアだけでなく、歯科医院での定期的なクリーニングも必須です。プロによるインプラントのケアを受けることで長くインプラントを使っていただけます。
処方された薬を飲む
術後は痛み止めや感染予防のための抗生物質が処方されることがほとんどです。痛み止めは痛みがなければ飲まなくても結構ですが、抗生物質は腫れ予防としても必ず処方された分全て飲み切るようにしましょう。
ご自身の判断で服用を止めたりしないようにしてください。
血流が良くなる行動は控える
インプラントのオペ後は腫れ防止のために、血流が良くなる行動は避けるようにしてください。
例えば、お風呂にゆっくりつかる、お酒を飲む、運動するなどです。当日はぬるめのシャワー程度にして、ご自宅でリラックスして過ごしましょう。
強く腫れが出るのは翌日から3日間ほどです。スケジュール調整を行い術後3日間はゆっくり過ごせるようにしてください。
濡れタオルで冷やす
患部が腫れぼったい、熱をもっていると感じた場合は濡らしたタオルを頬に当てて冷やすといいでしょう。この時、アイスノンなど冷たすぎるもので患部を冷やさないようにしましょう。
冷やしすぎることで血流が悪くなり、傷の治りが悪くなってしまいます。濡れたタオル程度にしておきましょう。
まとめ
今回はインプラント後の腫れについてお話ししました。インプラントは外科治療ということもあり、少なからず腫れが出てしまうことがあります。
腫れの強さについては個人差が大きく、インプラントを入れる数や炎症の強さなどによって変わってきます。
なるべく腫れを抑えるためにも、術後は口腔内を清潔にして医師の指示にしたがいご自宅でゆっくり過ごすようにしましょう。
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