監修:歯科医師 河合良治
噛むと耳が痛いと感じることがありますか?
耳が痛くて耳鼻科にいったけど、耳に異常はみられない…。
そんな方は顎関節症が原因かもしれません。顎関節症で耳の痛みはなかなかイメージがないかもしれませんが、顎関節と耳はすぐ近くにある組織だから密接に関係しているのです。様々な原因で耳が痛くなることがあります。
今回は顎関節症治療のプロの視点から耳の痛みについてお話ししていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
まず、耳に指を入れて口を開け閉めしてみましょう。顎の動きが伝わると思います。すぐ前に下顎頭(関節)があるのです。
顎関節症で耳が痛む理由

私たちの耳は、顔の他の部位と同様に筋肉によって制御されています。
そして私たちの側頭骨(顔の横部分にある骨)は、耳の近くにある下顎、つまり顎関節と結合しています。 2 つは互いに隣接して存在するため、どちらかに影響を与える要因は、もう一方にも影響を及ぼします。
顎関節は耳の一部である外耳道の近くにあります。 そのため、顎関節症によって顎関節に炎症が起こると耳の痛みを引き起こす可能性があるのです。 (耳ではないのですが。)
また、両者は間接的に連動しているため、顎に衝撃が加わると耳に悪影響を及ぼします。 顎関節周囲の筋肉に異常があると、耳や神経に過剰な圧力がかかり、痛みが生じる可能性があります。また聞こえづらいということもかつての患者さんでは言われたことがありました。(その後回復したようです。)
耳の痛みがある場合は、まず耳鼻科で聴力や鼓膜の状態を検査してもらい、異常がなければ顎関節症による耳の痛みを疑います。
参考:日本顎関節学会
顎関節症で起こる耳の症状

顎関節症によって起こる耳の症状は痛みの他にも様々です。ここではよくみられるものをご紹介していきます。イメージとしては、筋肉の過緊張や度重なる刺激による炎症というのがわかりやすいかと思います。
耳の奥が痛む
顎関節症の場合、耳の外側よりも奥の内部に痛みを感じることがほとんどです。これは、顎関節症に近い咀嚼筋が炎症を起こすことで耳の奥で痛みを感じてしまうからです。
難聴・耳鳴り
顎関節症により咀嚼筋の炎症や顎関節の歪みが生じることで内耳の神経伝達系にトラブルがおき、難聴になることがあります。また、難聴の他にも耳鳴りが出ることがあります。
めまい
先ほどもお話しした内耳には、平衡感覚を司る三半規管が存在します。顎関節症により内耳にトラブルが起きることで、三半規管にも影響がおよびめまいを引き起こすことがあります。
身体がフワフワと浮いているような感覚に悩まされている場合は顎関節症が原因かもしれません。
顎関節症(耳の痛み)を改善するには

耳の痛みを取り除く最も簡単な方法は、根本的な原因である顎関節症を取り除くことです。ただし、虫歯治療のように顎関節症をすぐに治すということはそれに対応できる歯科医師が少ないことから、まだ難しく、それ以外は患者さんご自身による努力が必要になってきます。
一番正しいのは、顎関節が無理な動きをしなくて済むように、まずは顎のリラックス治療を受けて正常な顎関節の位置を再現し、そこにあった噛み合わせに整えるということです。
ここでは、普段から顎関節症改善のために気をつけてほしいことをまとめました。まず前提としては間違った噛み合わせによる噛み合わせのズレを補正する顎の動き、過緊張が重要な因子ですから、そうならないようには以下のことが参考になるかと思います。
・食いしばりを止める
・マッサージなどのリラクゼーション
・堅い食べ物を避ける
・チューインガムを噛まない(軽くならいい)
・歯ぎしり用のナイトガードを使う(とりあえずないよりはまし)
・ストレスの軽減
・痛みがある場合は患部を軽く冷やす
参考:Mission Bend Family Dentistry
まとめ
今回は顎関節症と耳の痛みについてお話ししました。顎関節と耳はとても近い場所に位置しているため、顎関節症の影響がダイレクトに耳に繋がってしまい、痛みを引き起こしやすくなります。
ひどい場合には難聴やめまいなどを引き起こすこともあり、日常生活にも影響が出てしまいます。耳の痛みに悩まされているけど、耳鼻科で検査をしたが耳ではないと言われた方、原因がわからないという方はもしかしたら顎関節症が原因かもしれませんので、一度詳しい医院に相談してみてください。
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