執筆:歯科医師 河合良治
口を開けると顎がカクカクと音がなる…と言う方は、もしかしたら「顎関節症」かもしれません。
放置してしまうと強い痛みを感じたり、口が開けられなくなるなどの問題を引き起こしていきます。
今回は、顎から音がなる症状や顎関節症についてお話ししていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
顎から音が鳴る!顎関節症とは?
顎がカクカク、ミシミシ音がなるといった場合は顎関節症が原因かもしれません。近年日本人にとても多い疾患です。
顎関節症では、顎に関する主な3つの症状があります。
<顎関節症の3つの症状>
・あごが痛む(顎関節痛・咀嚼筋痛)
・口が開かない(開口障害)
・あごを動かすと音がする(顎関節雑音)
参考:日本顎関節学会
顎関節の骨と骨の間にある「関節円板」のずれが生じると、口を開けたり閉じたりした時に音が鳴るようになってしまいます。特に顎関節は耳と近いので、音が気になる場合が多いです。
音が鳴っている状態のまま、自然に改善する場合もあれば、状態が悪化し痛みを伴うこともありますので、気になる方は早めに歯科医院で診てもらうようにしましょう。ただし専門でないと望ましい治療が受けられることは少ないです。
歯科医院での主な治療はマウスピース(スプリント)が一般的ですが、これも多岐に渡る方法がありますが、まゆつばものも多いのでクリニック選び、治療をされる際には注意が必要です。
よくあるのが、やわらかい素材プラスチックで作成したマウスピースを、痛みのあるときや夜間に装着する治療法です。噛んだ時に顎に加わる力を分散させる方法です。ただ正確に作成しないと、余計に顎がずれて負担がかかります。正直わたしどもの見解としては緊急時以外使用しない、ないよりはマシというスタンスになります。むしろ合わないマウスピースだと、返って不快になってしまうことも多くあります。つまり、顎関節症の根本的な治療にはなりませんので正しいマウスピースの作成をお勧めします。
またご自身でも食い縛りをしないなど、顎関節症対策も必要になってきます。
顎関節症のセルフチェック
出典:時事メディカル
「もしかしたら顎関節症かも」と感じる方は、簡単にできるセルフチェックを行ってみてください。通常健康な状態での口が開く範囲は、上下の前歯の間が4cm以上あるのが正常とされています。
まず、手の人差し指・中指・薬指の3本を伸ばし、縦にして口に入れてみてください。
その際、指が3本分全部入らない、ギリギリ入るけど痛みがある場合は筋の緊張がおこっており、顎関節症の可能性があります。ただ入らないからといって顎関節症と決まったわけではありませんので、歯科医院で相談してみましょう。
セルフチェックの際に痛みがある場合は、無理に入れないようにしましょう。無理にしてしまうと顎が外れてしまうなどのトラブルを起こしやすくなります。
顎関節症の原因
顎関節症の原因には様々なものがありますが、直接的な要因としては、
噛み合わせの不具合
もしくは
外傷による顎関節への障害です。
間接的には、いくつかの要因がありますので、知っておいて当てはまりそうなものを改善していくようにしましょう。
顎関節症の間接的な原因には以下のようなものがあります。
・ストレス、疲労
・唇を噛むなどの口腔習癖
・TCH(歯を接触する癖)
・歯ぎしりや食いしばりなどのブラキシズム
・姿勢
・生活習慣
以上のように顎関節症は、様々な要因が重なって発症し、気づくことが多いです。そのため、正しい治療を受けれない場合は、個人で根本解決するのは難しく、対症療法として顎に負担がかからないようにし、生活習慣やストレスリリースなどをしながら少しづつ改善していくことを期待するということになってしまうのです。
まとめ
今回は、顎からカクカクと音が鳴る症状と、顎関節症についてお話ししました。顎から音が鳴る状態は顎関節症の症状の一つになります。ただし音が絶対にいけないのか?ということではありません。顎の運動がスムーズということが本来欲しい機能ですので、そこをゴールとすべきでしょう。
音は、自然に改善される場合もあれば、(ただし治癒ではないです。)症状がさらに悪化して口が開かない、痛みを感じるなど日常生活に支障をきたすこともあります。
そのため、気になれば早い段階で歯科医院で一度様子を見てもらうようにしてください。ただし繰り返しになりますが、顎関節症を診察するというクリニックは多いですが、根本解決できる歯科クリニックは非常に少ないので正しい治療を受けるようにしてください。重要ワードは【中心位】です。
顎関節症は、顎に負担を減らすというのが当面の目標です。個人でできる治療法はあまり食いしばらないことくらいしかなく、他は生活習慣の見直しやストレスの改善などが主な手段になります。多くの場合は噛み合わせによるものがほとんどですから、噛み合わせを診察できる歯科クリニックを受診するようにしてください。噛み合わせというのは、『中心位』という顎の位置に誘導して診断できるかというのが超基本になりますが、日本では中心位ベースの診療はほぼ行われないです。だから本来治るべき人が「治らない」といって諦めてしまう人が多数出てしまうのはとても残念でなりません。噛み合わせが原因で顎関節症が起きてしまっているか、まずはしっかりと診察できるクリニックを探してください。
当院では、多くの方に顎関節症と噛み合わせにお悩みの方の治療を行ってきています。顎から音が鳴る、口が開かないなどお悩みの方は一度ご相談ください。
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