執筆:噛み合わせ認定医 河合良治
前歯はいつも目にするところですから、気がつきやすい部分です。人の目につきやすいことから、見た目が気になるという患者さんが多くいらっしゃいます。前歯のお悩みと言っても虫歯から色の変色、生えている位置の以上などさまざまです。今回は代表的な前歯の困りごとと、歯科医院で行う治療方法について詳しく解説していきます。
よくある前歯の困りごとと歯医者で行う治療方法
ここでは、よくみられる前歯の困りごととその治療方法についてお話ししていきます。
前歯のむし歯
よくあるご相談のひとつが、前歯にできてしまったむし歯です。特に歯と歯の間はむし歯ができやすく、ある程度進行してしまうと歯の内部が黒っぽく変色し、見た目も気になるようになってきます。
レントゲンを写して診断します。その結果、小さなむし歯であれば「コンポジットレジン」と言われる樹脂の材料を詰め、光で固める方法が一般的です。
白い素材なので治療後は見た目も綺麗になります。(基本的に前歯治療で白い物以外はないですが。)
数年後に材料が劣化して歯とレジンの間に段差部に着色してしまうことがあります。その場合は虫歯ではないですが、再度治療をすることによりまたきれいにすることができます。
むし歯の範囲が大きい場合は神経の治療が必要になってきます。神経をとる場合は歯を広範囲に削るため、強度がなくなり、歯全体の被せ物の治療が必要になります。被せ物には保険の材料と自費の材料があり、選択することができます。
セラミックの被せ物は変色することがないので、前歯の見た目を気にされる場合は第一選択でしょう。前歯の見た目は関係ないと思われる場合のはそのほかの治療でも大丈夫でしょう。
前歯の変色
むし歯ではないけれど前歯が変色しているといったケースには、いくつか原因があります。ここでは代表的なものをご紹介していきます。
・神経の影響によるもの
歯は普通に生えているが、歯の色だけ変色してる場合です。何かのアクシデントで神経が死んでしまっていることがあります。また、以前に神経の治療をしたことで、歯に栄養が行き渡らなくなり変色を起こしていきます。
この場合は、歯がしっかりしていれば、ウォーキングブリーチ法などのように、ホワイトニングを行うことができます。ただし、強度的に問題がある場合は、被せ物をすることが安心です。なぜなら、強度的な問題があると、歯根破折といって抜歯をすることが必要になるからです。
・着色によるもの
飲食物の色素やタバコなどのヤニにより歯が着色してしまった場合は、歯科医院でのクリーニングやホワイトニングを行うことで自然な白さへと戻っていきます。
・前歯の歯ぐき部分の黒ずみ
前歯の被せ物治療をして数年経った頃から「歯ぐきが黒ずんできた」というケースがあります。これは大きく分けて、歯の土台によるものと、被せ物に使われている金属が見えてくることによります。歯の土台の治療を保険治療で行うと銀を使うことが多く、この場合は溶け出し歯に色が移ってしまうことが原因で起こります。
被せ物をして数年して歯茎が下がってくるとどうしても境目の金属にめがいき黒く見えてしまいます。この場合はメタルフリーといって金属をつかわない治療をすることで防ぐことができます。ただし、元々の歯が色が変色していると、それが透けるため再度の治療が必要になります。
・前歯から出血がある、歯ぐきが腫れている
ほとんどの場合は、正しく歯磨きができていないことによるお口の清掃不良で起こります。お口の中に残ったプラーク(歯垢)は歯ぐきの炎症を起こし、出血や腫れを起こしていきます。そのまま放置すると歯周病へと移行し最悪の場合は歯が抜けてしまうこともありますので、歯科医院でクリーニングやブラッシング指導を受ける必要があります。
・前歯の見た目(隙間・傾き)
前歯と前歯の間に隙間ができていたり、または歯が傾いていたり、生えている位置がずれたりしているという場合は2つの治療法があります。1つは「矯正治療」により、ご自身の歯を動かして綺麗に並べていく方法、2つ目は歯を削りオールセラミックなどの被せ物の治療でおこなうセラミック矯正と呼ばれるものがあります。どちらも自費治療になります。
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まとめ
今回は、よくある前歯の困りごとと歯医者で行われる治療方法についてお話ししました。前歯の困りごとはむし歯だけでなく、被せ物や飲食による変色や、前歯の隙間、歯周病などさまざまです。しかし、どのケースも適した治療方法がありますので安心してご来院ください。また前歯は噛み合わせの舵取り役であり非常に重要です。当院では、患者さんに合ったベストな治療方法をご提案させていただきますので、前歯に違和感を感じている、見た目が気になり始めたという方は放置せず早めにご来院ください。