執筆:噛み合わせ認定医 河合良治
歯を失った際に用いられる治療方法の1つに挙げられるインプラント治療。(自費診療になり健康保険の対象外です。)高額というイメージを持たれる方が多く、インプラント治療を選ぶ際には慎重になり、悩まれる方が多いかと思います。インプラント治療にはどのようなメリット・デメリットがあるのか、今回こちらの記事で解説していきます。
インプラントとは
インプラントとは、歯を失った際に用いられる治療方法の一つで、骨内にインプラント体(人工歯根・フィクスチャー)を埋め込む処置になります。
インプラントの構造は、
フィクスチャー、アバットメント(土台)、上部構造(冠)からなっています。
まずインプラント体、フィクスチャーを骨内に埋め込み、
その後にアバットメント(インプラント体と人工歯を繋ぐもの)を接続し、
その上に上部構造(人工歯)を装着し、歯として機能させます。
インプラントは元の歯と同じように機能・審美を回復することが可能な処置です。
インプラント体は主にチタン合金や純チタンでできており、金属を骨内に埋め込んで問題はないのかと不安や疑問に思われる方もいるかと思いますが、通常は人体は金属などの異物を体内に入れ込むと拒絶するのですが、チタン合金や純チタンはそうならないのです。
血液や骨など体に馴染みやすく、副作用が出にくいのが特徴です。
そのため安心して骨にインプラント体を埋め込む処置ができるのです。
インプラント治療についてはこちら>>>創業70周年池袋同仁歯科クリニック|インプラント治療
インプラント治療のメリット・デメリット
メリット
- 自分の歯と同じように噛むことができる
- 入れ歯のように取り外す面倒がない
- 審美性に優れている
- 骨の退縮を抑えられる(ケア次第)
- 健康な歯を削らないで局所的に単独で処置できる。
- 他の歯への噛む力の負担を抑えることができる
- インプラントは虫歯にならない
- 設計次第では分解してメンテナンスが可能
インプラント治療のメリットは、なんといっても自身の歯とほぼ変わりなく同じ感覚で噛むことが可能なことです。入れ歯のように口腔内に異物感がなく、取り外しをする面倒がありません。また、両サイドなどの歯を削らずに局所的に単独で処置ができることも大きなメリットといえます。
ただし、ブリッジも入れ歯も長年の歴史がありますので、治療箇所によっては有効な方法で、なんでもインプラントというのは軽率です。
歯を失った際に用いられる治療方法には、「インプラント・ブリッジ・入れ歯」の3種類の治療方法が挙げられますが、ブリッジと入れ歯は治療する際に当該歯以外の他の歯に対しても処置をする必要があります。それに比べインプラントは直接骨にインプラント体(人工歯根)を埋め込むので、他の歯の処置をする必要がないことがおおいです。
また、インプラントは人工歯なので虫歯にならないのも特徴です。(歯周病にはなります)
上記で紹介した図のように、基本的にインプラントはインプラント体(フィクスチャー)・アバットメント・上部構造(人工歯)の三段階の構造でできていますが、なかには、アバットメントとフィクスチャーが一体になっているものもあります。これは価格が低価格なのですが、融通がきかず、普通の歯科医師ならあまり使用しないものです。リスク管理が限られるからです。
アバットメントが外せるものは、修理も比較的用意ですし、それぞれを分解してメンテナンスを行うことも可能です。
デメリット
- 手術が必要なため術後腫れや痛みがでることがある
- 治療期間が他の治療より長い
- 保険がきかないため高額
- 骨の量が少ないと治療が困難
- インプラント体が感染し脱落するリスクがある(インプラント周囲炎)
- 定期的な検診が必須
- セルフケアができない人には不可能
- インプラント体には、神経がないので無症状で歯周炎になる。
一方デメリットの方は、インプラント治療は手術を必要とするため術後は腫れや痛みがでる可能性があり、患者さんに負担が生じます。
入れ歯のように取り外しの面倒がない分、一度骨に埋入すると動かすことができません。
そのため「患者自身でセルフケアができるのか」、「噛み合わせの力」を十分に負担できるかと考えて設計する必要があります。
インプラント治療のメリット・デメリットから引用
インプラント治療は保険がきかないため30~50万ほどの治療費がかかり、高額です。
また、ブリッジや入れ歯治療と比べると、治療期間が長く感じるかもしれません。
インプラント治療はすぐに誰でもできるという訳ではなく、骨の量が少ない場合は骨を増やす補助手術などを必要とするケースがあります。
その場合はプラスで治療費や治療期間がかかる可能性が高いといえます。
そして、インプラント治療で一番気を付けたいのが、「インプラント周囲炎」です。
インプラント周囲炎とは、いわゆる歯周病と同じです。
インプラント治療には虫歯にならないというメリットがありますが、歯周病になりやすく、元の歯より進行が早いのが特徴です。
インプラント治療の成否は、術中、術後の感染です。術中の清潔度は、事前に口腔内の虫歯や歯周病をなくし、さらにプロフェッショナルケアにより完全に清潔して行う必要があります。術後、定着後は歯周病によりインプラント周囲炎になり脱落リスクがあります。自身の歯磨きなどのセルフケアがきちんとできていないとインプラント周囲炎になってしまうのです。
インプラントの治療には1回法や2回法といった治療方法がありますが、一回法は、完全に埋伏しないため感染のリスクが多少増えます。
また、インプラント周囲炎になってしまうと、せっかく入れたインプラントを喪失してしまう可能性があります。
そうならないためにもセルフケアや定期的な検診・メンテナンスは必要不可欠です。
術後はインプラントにトラブルが出ないよう、「インプラント治療+術後のメンテナンスはセット」と覚えておくといいでしょう。
インプラント治療期間についてはこちら>>>創業70年池袋同仁歯科クリニック|インプラント治療の期間
【参考情報】公益社団法人日本口腔インプラント学会|インプラントのメリット・デメリット
まとめ
インプラント治療は条件を満たして、細心の注意をはらいしっかりと取り組めば最高の治療法と言えるでしう。自身の歯と同じように噛むことができるという点が最大の魅力です。
「歯が抜けたらインプラントを入れればいい」というなんとなくの考えは無謀です。インプラント埋入後は、セルフケア・メンテナンスが必須ですので、パートナーとなれる歯科クリニックで埋入されるをお勧めします。またプラックコントロールができない方には難しい処置です。
インプラント治療やその他の治療は主治医としっかり相談し、自分に合った最適な治療法を選択されてください。一番大切なのはその後あなたが二度とインプラントしなくていいお口を手に入れることだと我々は考えています!