執筆:噛み合わせ認定医 河合良治
近年歯並び矯正には、ワイヤー矯正以外に、マウスピース矯正の方法があります。床矯正もありますが、症例は限定的なのでここでは省略します。
今回は、2つの治療方法の違いについて、簡単にご説明いたします。
どちらの治療方法がご自身のお口の状態に合っているのか、お悩みの方もいらっしゃるかと思います。
今回は、2つの治療方法の違いについて、簡単にご説明いたします。
【関連情報】マウスピース矯正(インビザライン)
装置の違い
マウスピース矯正とワイヤー矯正の装置の違いについてご説明いたします。
マウスピース矯正
マウスピース矯正の場合、シミュレーションを基に製作したマウスピースを段階的に交換して歯の移動をしていきます。そのうち、インビザラインという方法、システムでは歯にアタッチメントという装置をつけて、そこから力がかかるようにして移動していきます。
マウスピースの装着期間を指示されますが、概ね2週間程度で交換していきます。ご自身で次のマウスピースへ交換していただきます。
通院は、2か月〜3ヶ月に1度程度です。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、歯の表面にボタンのようなのブラケットという装置を接着します。
ブラケットにワイヤーを結紮し、調整し力を加えることで歯の移動を行います。
ワイヤー矯正の装置は、歯についているのでご自身ですることは特になく、適切なブラッシング程度です。患者様ご自身で取り外しができないため、来院して調整します。
治療の経過によって異なりますが、1か月〜2ヶ月に1度の頻度でご通院いただきます。
【関連情報】マウスピース矯正とワイヤー矯正メリットデメリット
治療の流れ
基本的に、治療の手順は、マウスピース矯正もワイヤー矯正も大枠は同じです。
- カウンセリング:患者様のお悩みや、どのような歯並びになりたいかを伺います。
- 検査・歯形取り(印象採得):レントゲン撮影や歯肉の状態、むし歯の有無を確認します。歯型を採ります。
- 診断・治療計画:検査結果をもとに診断を行い、治療計画をご提案します。
- 矯正装置の製作:歯型をもとに、矯正装置を製作します。
- 矯正装置の装着:歯の移動に併せて装置を交換し、理想の歯並びに導きます。
- 保定:治療が完了し、理想的な歯並びになったら、後戻りを防止することが大切です。
治療期間
治療期間は、まったく同じ歯並びケースの場合さほど変わりません。少しの移動であれば、ワイヤー矯正よりマウスピース矯正の方が短いことも多いです。
これは、マウスピース矯正の適応範囲にも影響されるため、短いからマウスピース矯正の方が優れた治療というわけではありません。
マウスピース矯正
歯並びの状態によっても異なりますが、部分的な歯並びの矯正であれば数か月で完了するものもあります。
一般的には、1~2年程度をご想定ください。
マウスピースの装着時間など、指示通りに行っていただけない場合には、治療期間が延びてしまうこともあります。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正も、歯並びの状態によって治療期間の差異はありますが、一般的に1~2年をご想定ください。
抜歯が必要なケースや、ワイヤーを歯の裏につける舌側矯正の場合には、半年〜1年程度長くかかることがあります。(舌側矯正は当医院では取り扱いがありません)
治療中の不快感
矯正治療中は、装置を付けるため、異物感や痛みといった不快な症状を感じるタイミングがあります。
もちろん、徐々に慣れていくため大きな心配は必要ありません。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、痛みや不快感がある場合にはご自身で取り外すことができるというメリットがあります。ただし20時間以上装着していないと動きません。
こういったことから装着時の痛みは、ワイヤー矯正に比べると少ないです。
ワイヤーのような金属素材ではないため、粘膜に傷ができるリスクも小さいと言えます。
ただし、まれに異物感を感じて装着が不可能で、ワイヤー矯正を希望される方もいらっしゃいますので、注意が必要です。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正の場合、調整当日は、咬み合わせると痛みや不快感がある場合があります。
調整日から日にちが経つと、慣れていきますのでご安心ください。
歯についている装置、ブラケットやワイヤーが何らかの原因で違和感がある場合があります。
見た目
マウスピース矯正
透明な装着のため、基本的に装着していても他人にはほとんど分かりません。
発音にもさほど影響がないため、会話も問題ありません。
ワイヤー矯正
笑った時にどの程度歯が見えるか、使用する装置は金属か、透明かによって、装置の目立ち方は変わってきます。
ワイヤーを白い素材にすることや、歯の裏側に装着する舌側矯正を行うことで、目立たなくすることが可能です。
※ただし、どの患者さんもおっしゃることですが、「装置云々よりも歯並びが悪い方がずっと見た目が悪かった。もう少し早くやっておけばよかった」です。その通りでして少々の歯並び不正の場合は装置が目立つことを感じるかもしれませんが、歯列不正がひどいと、歯はあちこちをむいてしまっているのです。参考にされてください。
食事は?
歯科矯正治療中のお食事は、治療を開始したばかりのころには戸惑うことも多いかと思いますが、皆さんだんだんと慣れていらっしゃいます。
マウスピース矯正
ご自身で取り外しが可能な装置ですので、お食事の際には取り外すことができます。装置に食渣が付くことや、着色はしづらいです。お食事後は、歯列矯正を開始する以前と同様に隅々まで歯磨きをすることが可能です。
ワイヤー矯正
ワイヤー装置の隙間に、食渣が残ることがあります。食後は、小さな歯ブラシなどを使った歯磨きなどが必要です。ガムやキャラメル、お餅といった粘着質な食材は装置から取れなくなるため注意が必要です。また、硬いものを噛んだ際や、フランスパンや、するめのような引っ張って食べる動作は、装置自体がはがれてしまう可能性があります。
まとめ
マウスピース矯正とワイヤー矯正の大まかな違いをご理解いただけたでしょうか?マウスピース矯正が優れてよく見えてしまうかもしれませんが、ずばりマウスピース矯正向きの歯並びという方は少ないのが現状です。すべてマウスピース矯正でできるという先生もいらっしゃいますが、歯はどんなことをしようとも、移動する量は決まっているので、どこかに妥協案を入れなくてはなりません。ですからすべてマウスピースでそれもきっちりやるとなると途方もないシート数、つまり治療期間がかかってしまいます。
なるべくマウスピース矯正をしたいが、治療もきっちりとしたいというあなたにはワイヤー矯正との併用をオススメします。当初は前歯に装置を付けないことも可能なので、意外に平気だという方が多いです。マウスピース矯正は比較的ライフスタイルに影響を与えない治療方法ともいえますので適応であればラッキーです。歯列矯正に、ご興味をお持ちでしたらお気軽にご相談ください。最適な治療方法を、患者様のライフスタイルを大切にご提案いたします。