執筆 噛み合わせ認定医 河合
「ずっとコンプレックスに感じていた歯並びを改善したい」「噛み合わせが悪く身体の健康のためにも歯並びを整えたい」など、歯並びについて悩みがある方は歯科矯正を始めようと考える方も多いと思います。
しかし、中には「歯科矯正はやめた方がいい」などの噂が流れ、治療にあたって不安に感じてしまう人もいるかもしれません。今回は歯科矯正はやめた方がいいと言われる原因や、実際にやめた方がいいケースについて詳しくお話ししていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
歯科矯正はやめた方がいい?そう言われる原因

歯科矯正について調べていると、中には「歯科矯正はやめた方がいい」といった噂を目にすることがあるかもしれません。特に大人の歯科矯正は、抜歯や費用の問題、期間などたくさんの壁があります。
一般的に歯科矯正は歯並びを整え、見た目を美しくするだけでなく、噛み合わせを整え、お口の機能を向上させるため、大きなメリットがあります。
それでも、歯科矯正はやめた方がいいという方のほとんどは歯科矯正に失敗、もしくは後悔しているという方でしょう。
以下で歯科矯正をやめた方が良いと言われる理由についていくつか説明していきます。
ですが、
一番多いのは、自分の体験ではなく、他人に矯正治療をして欲しくない人が流す噂です。。。
なぜ歯列矯正をしてほしくないのか
若い女性が歯列矯正の相談にいらっしゃいました。診察後、待合室で彼氏とお話をしています。すると彼は「今のままで十分可愛いよ!お金もったいないよ!」というわけです。若い男性にありがちな自分の彼女に矯正器具をつけて欲しくないというかっこつけでしょう。でも彼女は八重歯を気にしていたいのです。
また、別のケースでは、高校生のお子さんとお母さんが相談にいらっしゃいました。長年ずっと矯正をしたかったが進学もあるし、ずっと我慢してきたそうです。ついに高校に入学したからもう大丈夫と、二人は矯正をする気でいました。しかし、費用の支払いはお父さんです。するとお父さんは、抜歯をしてまで矯正なんてお金がもったいないと言い出したのです。お二人はえーお父さんとなり寂しそうに帰られました。
・抜歯の数が多かった
歯科矯正をやめた方がいいというひとの意見の中でよくみられるものが、「抜歯」についてです。大人の方の矯正治療では歯を並べるスペースがなく抜歯を必要とするケースが多いです。
当医院では患者さんの意見を重視して、治療計画にも反映するので、検査で抜歯の判定が出てるケースでも当初は抜歯をしないで進めることもあります。しかし、だんだん歯が出っ歯になるにつれ抜歯をしてくれと100%の人が言います。
4本歯を抜く必要がある、一見健康な歯を抜歯すると聞くとやはり嫌なものです。しかしこの【健康な歯】の定義がそもそも矯正になると違うのです。「虫歯がない=健康な歯」ではないわけです。その歯があるおかげで、炎症が起きたり虫歯になればその歯は必要な歯なのでしょうか。歯を抜くのに抵抗があるのは人間心理からいって正常なことなので、それを喜ぶ人はいませんが、それと交換に健康的な魅力的な口、人生を手にはいるならこれはどれほどのかちがあるでしょう。
よくよく考えてみればわかりますが、
八重歯は頬の外側にあり、歯としてはまるで機能していないわけです。これを気持ちの問題で残しておいても、いずれは抜け落ちてしまうわけで、人生を戦略的に考えるのであれば、根の長い犬歯を保存しそのうしろにある小臼歯を抜歯するというのは、正解です。
・費用が予定よりも多くかかった
歯科矯正で最も多く挙げられる心理的ハードルが費用面です。初診から矯正歯科治療後の保定期間の通院も含めた一般的な総額で80~120万円程度かかるのがほとんどです。最近では費用を抑えた歯科矯正などのキャッチコピーで矯正治療をおすすめする医院も増えてきています。
当初最安で終わると思ったら、治療が進むに当たってオプションの費用がかかったり、治療がスムーズにいかず追加費用がかかったりと当初の予定よりも多くの費用がかかってしまったという方もいるようです。
しかし、歯の動きは成人になると個人差が大きく一定ではありません。これは、骨の成長は終わっていることや噛み方、噛む力による影響です。また昨今の物価上昇にともないこの数年で一気に3割も円安になっているわけですから、値段はあがるでしょう。
これも、やった本人はほぼ満足するので、本人というより、両親やパートナーの愚痴的要素が大きいでしょう。
参考:日本矯正歯科学会
・治療中に痛みを感じた
矯正治療中は歯を動かす際に痛みを感じることがあります。
特に矯正治療を始めたばかりの頃や矯正器具を交換したばかりの頃には痛みを感じやすく、人によっては強い痛みを感じて食事をとるのも難しかったと感じる方がいるようです。
痛みに関しては数日程度で慣れて、次第に感じなくなることがほとんどですが、強い痛みが長期間続く場合は問題がありますので、すぐに歯科医師に相談する必要があります。職人気質の矯正医の先生はワイヤーを曲げてよくやるのですが、これが結構痛かったりします。(※当医院では使用していません。)
また当医院では理事長の河合も歯科治療が大の苦手ということから、痛みに関する仕組みは徹底されており、使用する器具は、痛みが出にくいものを使用しております。これまでに「痛いから外してほしい」と言われたことは一度もありません。
・治療期間が長かった
歯科矯正では歯をゆっくりと動かしていくために全額の矯正治療では最低でも2年ほどの期間が必要になります。重度の不正咬合の場合は、5年以上かかる方もいるほど治療期間には個人差があります。このほとんどのは奥歯の前後的なうごきによるものです。
2年ほどで終わると思っていた治療が、倍近く長くなったなど治療期間に対して不満がでやすいです。
・矯正器具が気になる
歯科矯正では歯を動かすために、矯正器具を装着する必要があります。主な矯正方法としてはワイヤー矯正とマウスピース矯正が挙げられますが、どちらにもメリットとデメリットがあります。
ワイヤー矯正では、歯の表面にブラケットやワイアーなどの矯正器具がつくため(表側矯正の場合)外から矯正器具が見えるので人の目が気になるといった方も多いですが、ほとんどの人は慣れます。
その反面マウスピース矯正では透明なマウスピースを装着するため、見た目には目立ちにくく矯正していることがバレにくいですが、マウスピースを装着している間は気軽に飲食ができないためにストレスを感じやすいといったデメリットもあります。奥歯の動きもとくいではありません。
・矯正治療の結果に満足できなかった
稀なケースではありますが、当初の思っていた結果とちがい、思うように歯並びが整わなかったと不満が出ることがあります。これはほとんどの場合は前歯によるものであり、出っ歯を治すことにより、口元は引っ込んだのですが、成人してから矯正だったために前歯がさがり、ほうれい線がめだつようになったということがおおいです。(当医院ではあまり下げないことを提案しています。)
十分な保定期間をとらずに歯が後戻りを起こしてしまった場合など様々な理由があります。
またよく見られるケースが非抜歯矯正(抜歯をしないで矯正治療を行う方法)を推奨しており、歯を並べたところ出っ歯になってしまったというものです。
抜歯をしないことで歯を並べるスペースを確保できずに歯が前に出てしまったことが原因です。
参考:日本臨床矯正歯科医会
歯科矯正をやめた方がいいケースもある

実は患者様の状態によっては歯科矯正をやめた方が良いケースもあります。以下で主なものを説明していきます。
・重度の歯周病がある
歯周病は歯周ポケットの中で増殖した歯周病菌が、歯を支える骨や歯ぐきを破壊していく感染症です。
軽度の歯周病であれば適切な治療により状態を改善させキープすることができるのですが、重度の歯周病で顎の骨が大幅に減ってしまっている場合、矯正治療をしてしまうと歯にかける力で歯が抜け落ちてしまう場合があります。
歯周病がある方で、歯科矯正を希望の方はまず歯周病の治療を行い、状態が安定したところで矯正治療ができるかどうか歯科医師が判断していきます。
・むし歯がたくさんある方
歯科矯正中は、矯正器具が常にお口の中に入っていることもあり、汚れが溜まりやすく虫歯のリスクが高くなります。
矯正をする前にむし歯がたくさんある方は矯正治療を始めることでむし歯が進行したり、歯を残せなくなる状態になったりするリスクが高いため、むし歯の治療を優先しておこない矯正治療ができる状態まで改善させます。
矯正治療はメリットの方が大きい

費用面や痛みなど矯正治療にあたって、たくさんのストレスの壁に当たることがあります。
しかし、矯正治療では歯並びを美しく整えることができ、笑顔や口元に自信が持てるだけでなく、噛み合わせを整えることで正しくものが噛めるようになり、全身の健康にも繋がります。
歯並びや噛み合わせに悩んでいる方は、不安なことがあればまずは矯正治療を行っている歯科医院で相談してみましょう。
まとめ
今回は歯科矯正はやめた方がいいと言われる理由についてお話ししました。歯科矯正治療では、痛みや見た目の問題、費用面などたくさん考えることがあります。
治療後に「後悔した…」とならないためにも、しっかりとご自身でリサーチをおこない、いくつか気になる歯科医院へ矯正相談に行ってみることをおすすめします。
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