監修 噛み合わせ 認定医 河合良治
透明なマウスピースを装着して歯を動かすインビザラインは、目立ちにくい矯正方法として若い方や社会人の方からも人気の治療法です。
多くの方がインビザラインを始めるようになってきたのですが、中にはインビザラインをしたのに治療がやり直しになるといった方もいます。
今回はインビザラインがやり直しになってしまう原因や対策についてお話ししていきますので、ぜひ参考にしてください。
インビザラインのやり直しとは
インビザラインのやり直しには、大きく分けて2通りあります。
1つはインビザライン治療中に、マウスピースが合わなくなったり、マウスピースは合っているけども理想の位置に動いていなかったりして、もう一度歯型をとって計画を作り直す場合です。やり直しというより修正というのが正しいでしょう。
2つ目はインビザライン治療が終わったけども、なんだか噛み合わせが違う、仕上がりが違う気がするとかいう場合です。
インビザラインが治療途中にやり直しになってしまう原因
1つ目の治療中のやり直しですが、インビザラインを始めたににも関わらず、一定期間経過後に歯科医院に行くとエラーが出ていてもう一度歯型を取って計画をやり直すということがあります。
これは全体の治療計画のシート数が多ければ必ず生じるものです。なぜなら、ワイヤー矯正であれば毎月の調整時に理想の状態に行くために毎回診断して調整をするわけですが、インビザラインでは、治療のスタート時にこう動くだろうと予想して、全てシートを作るためです。ですから移動量が多い人ですと、その通りにならないことがほとんどなのです。最終的な調整まで含めて2−5回くらいスキャンして仕上げることが多くあります。
2つめのやり直しですが、綺麗にした歯並びが何らかの理由でやり直しというのは、歯科医院側と患者さんのゴール設定のギャップがある場合と、あとは一旦終わったけどまたずれてきたというような場合です。ここではそれらについて紹介、原因についてお話ししていきます。
インビザラインが治療終了後にやり直しになる原因
こちらの場合は、私たちがよく相談を受けるパターンです。
歯が後戻りを起こしてしまった
最も多い理由は歯が「後戻り」を起こしてしまったことによる治療のやり直しです。
後戻りは矯正中や矯正後の動いた歯が元の歯並びに戻ろうと動いてしまう状態です。後戻りには矯正治療中に起こしてしまうものと、矯正治療後に起こしてしまうものがあります。
治療中に後戻りを起こしてしまう後戻りは以下の2つが主な原因になります。
・マウスピースを決められた時間装着しなかった
・マウスピースが破損していた
特にインビザラインではマウスピースを自己管理のもと、1日22時間以上と決められた時間装着する必要があります。しかし、食後についつい装着するのを忘れてしまったり、旅行などで1日以上装着しなかったりしてしまったことで歯が後戻りを起こしてしまいます。
インビザライン中にマウスピースを装着し忘れていて、慌てて装着した時にきつく痛みを感じたという方も多いかもしれません。
これがまさに後戻りを起こしている際中で、ひどい場合にはマウスピースが合わなくなり、治療のやり直しになってしまうことがあります。後戻りしたら次のシートに移らずにしっかり今のシートを長めに利用してから次のシートを使うようにしましょう。
また、マウスピースが破損しているのに気づかず装着していると歯が正しく動かないために後戻りを起こすことがあります。
あと合わなくなる理由の一つに歯磨きが仕切れていなくて、マウスピースと歯の間に食物が入っていてその分シートが浮いてるということです。
そして、治療後に後戻りを起こしてしまう原因としては以下のものが挙げられます。
・保定期間をしっかりとらなかった
インビザラインをはじめとする矯正治療では治療後に、必ず綺麗に並べた歯並びを固定する「保定期間」というものを設けます。
歯を動かす動的治療が完了した直後は歯がかなり不安定です。これは歯の周囲の骨や歯肉などの組織がしっかりと歯を固定していないためです。
そのため保定期間をおいて歯を固定させる必要があります。もし保定期間を置かない場合は、後戻りを起こしてしまい、さらに噛み合わせが悪化するなどの原因になります。
保定期間ではリテーナーと呼ばれる補綴装置を装着し、歯を動かした期間と同じぐらいの期間は最低でもとる必要があります。
参考:日本矯正歯科学会
噛み合わせが変わってしまった
インビザラインの治療後に「歯並びはよいけれども噛み合わせがしっくりこない」ということがあります。どうも噛む位置が変わってしまい、顎に負担がかかるようになった、痛みが出てきたという場合も治療のやり直しになることがあります。
本来、インビザラインでは治療前にコンピューター上でシュミレーションを行い、噛み合わせも考慮した治療計画を立てるため治療後に噛み合わせが悪くなることはないはずですが、でも噛み合わせがしっくりこない理由は、噛み合わせのゴールが違っていたということです。ただしこれは矯正専門医ですら、あまり取り入れませんので、残念ながらこのことがわかる歯科医師のもとで治療を受ける以外にはありません。
また、これはなかなか担当医にわかってもらうことはむずかしいことが多いようです。先日も矯正が終わったけど、「噛み合わせがしっくりこない」という方が他県から相談にいらっしゃいましたが、なんと矯正医院に5軒いっても、「髪の毛くらいの厚みでも噛み合わせは変わるくらいだから」と言われたり、「感じ方は人それぞれ」「みたところしっかり噛めている」と言われてしまったそうでした。しかし当医院の河合が診察すると明らかに噛み合わせ位置がずれていることがわかったのでした。
この噛み合わせの位置は中心位といいます。詳しくはこちらをどうぞ。
噛み合わせ治療 全国から来院される池袋同仁歯科クリニック噛み合わせ治療です。
顎に負担を感じたまま放置してしまうと、ひどい場合では顎関節症などに移行してしまうこともありますので、必ず違和感を感じた時点で中心位のわかる歯科医師に相談しましょう。
他には、歯が後戻りを起こすことで噛み合わせが変わってしまうこともあります。
インビザラインの治療中に虫歯や歯周病になった
インビザラインの治療中に大きな虫歯ができた場合や重度の歯周病になってしまった場合も治療のやり直しになる可能性が高いです。
虫歯の場合は、削って詰めたり、虫歯が大きな場合は銀歯など被せ物の治療になってしまい歯の形が変わってしまうため、最初に作製したマウスピースが合わなくなってしまい再度マウスピースの作製が必要になります。
歯周病になってしまうと歯がぐらつきはじめ、矯正治療により歯に力を加えることで歯が抜けてしまう恐れがあるため、リスクが高いと感じた場合は矯正治療をストップし歯周病の治療を行うことがあります。
インビザラインがやり直しにならないための対策
インビザライン治療を計画通りに進め、治療のやり直しにならないためにできる対策として最も大事なことが「計画通りにマウスピースを装着すること」です。
インビザラインではマウスピースの装着時間、そして計画通りにマウスピースを交換していくことが最短で治療が終わり、後戻りを起こさない方法です。
必ず1日に22時間以上装着する癖をつけましょう。インビザラインを快適に進めていくために、1日の食事や間食のスケジュールを決め、ルーティン化することでマウスピースのつけ忘れを防ぐことができます。
そして、保定期間もリテーナーをしっかりと装着して十分な期間をおいてください。保定期間が終わってもリテーナーを寝る時だけつけるなどすることで、ずっと綺麗な歯並びを保つことができます。
インビザラインではビベラ・リテーナーと呼ばれる専用のマウスピースを装着して保定期間をとることがあります。ただし、これはその人の噛み合わせによって合う合わないということがありますので、当医院では他の装置の方が多いです。他にも固定式の保定装置があり、患者様のお口の状態に合わせた装置を選択していきます。
また治療中は虫歯や歯周病にならないために、正しい口腔ケアを行いましょう。
歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやタフトブラシ、フロスなども使うことをお勧めします。もしご自身のケアに自信がない場合は歯科医院でブラッシング指導を受けられますので、ぜひ相談してみましょう。
当医院では生涯に一度の矯正治療をコンセプトのしており、一生保証制度と治療前の予防プログラムを徹底していますので、ご安心ください。
まとめ
今回はインビザラインがやり直しになってしまう理由や対策についてお話ししました。
1、治療が途中でやり直しになる理由として最も多いものが、マウスピースがあっていないまま使い続けているということです。そして治療後に動いてしまったというのは「歯の後戻り」です。マウスピースや、保定装置を時間を守ってしよするようにしましょう。時間通りに装着していくことが後戻りを起こさない対策になりますので、治療中は決められた通りにマウスピースを装着しましょう。
2、治療が終わったけども、噛み合わせがしっくりこなくて他の医院でやり直しをする場合は、顎関節を中心にした【中心位】での治療が行われていない場合がほとんどです。当医院では、このタイプの患者さんから多く相談を受けて転院されて治療を受けられています。あきらめないでお気軽に相談されてください。
インビザライン以外にも様々な矯正治療に対応していますので理想を目指して治療をしていきましょう。
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