執筆:歯科医師 河合良治
口ゴボとは?
口ゴボとは、最近聞かれるようになった言葉で、口元が出ている状態をいいます。出歯と言われるような状態です。あくまで感覚的で、日常一般の方が使われる言葉です。
正式な矯正の分類では、「上下顎前突」「上顎前突」という分類にはいります。
口ゴボの治し方は、歯列矯正によって口元を下げる方法が一般的ですが、
大きく下げたい場合には、外科的に口元を下げる方法もあります。口ゴボは、アジア人女性に多いケースです。
矯正の分析では、横顔で口元の突出感を表す指標にEラインというものがあります。
このEラインをベースに横顔をみるとくちごぼの方は、明らかに口元が前に出てるケースです。
Eラインとは、鼻の先と顎の先を結んだ線上を指標に外にあるか内側にあるかで分析します。
これが正解というものでなく一つの基準です。
鼻の高い人種とアジア人のように鼻が低い人種では当然ラインが変わってくるわけです。
ですからこれが全てでなく他の指標も勘案して治療の計画は立てられます。
口ゴボ治療方法
基本的に歯列矯正で治療をすることが可能です。
ワイヤー矯正
歯に装置をつけて歯を移動させていきます。一番歴史があり治療後の予測もつきやすいです。
くちごぼの出っ歯の場合は多くのケースで抜歯が必要となります。軽い出っ歯であれば抜歯をしなくても平気なこともあります。ただし口元を下げたいわけですのでこの場合あまり非抜歯にこだわって矯正をすると、矯正完了後に思ったより下がっていなかったという本末転倒な結果にもなりかねませんので、ご自身でどの程度出っ歯を治したいのかイメージを持っておくことは大切です。
抜歯のパターン
上顎の小臼歯のみを抜歯する場合と上下の小臼歯を抜歯する場合があります。
マウスピース矯正
マウスピース矯正の種類はたくさんありますが、ほとんどのものは歯の軽い矯正に適しており、出っ歯となるとインビザラインくらいでしか治せないと思います。インビザラインでしっかりと設計(クリンチェック)をして行えば治療は可能です。その他のマウスピース矯正は前歯を下げるというように大きく歯を動かす矯正はあまり得意ではありません。
また顎の骨全体を下げるというのもインビザライン単体では難しいことがあります。その場合は部分的にワイヤー矯正を併用することで可能です。
セットバック手術
骨格的に顎の骨全体を一気に後ろに下げたい場合は、セットバックと呼ばれる外科的な手術を行うことになります。異常に前突してる場合などで機能的に問題がある場合には保険適応で手術が受けることもできます。
セラミック矯正(例外)
くちごぼとなると前歯の向きはかなり前に向いてしまっているのでこの場合セラミック矯正をすると、前歯の神経をとって治療をしないとなりません。歯の健康を考えると口ゴボ治療の場合セラミック矯正の適応とはいえません。
くちごぼになぜなるの?原因は?
口ゴボには大きく分けて二通りの原因があります。遺伝などの先天的なものと、おしゃぶりなどの後天的なものです。
- 遺伝
- 指しゃぶり
- 口呼吸(くちこきゅう)
他にも唇を噛んだり、舌で歯を押したりするような力がかかることで前歯が前に押し出され、出っ歯になることがあります。
遺伝
人種的なものや家系的なものであり、これはある程度予測がつきます。早めに対処していくことでコントロール可能なこともあります。ただこれを防ぐということはなかなか難しいです。
指しゃぶり
前歯の発育中に前方に押し出す力が加わり出っ歯になっていきます。アジア人は口唇の力が弱いとも言われており、小児の早期にこの習慣は取っておくことが望ましいです。また口呼吸にもなりやすいので注意が必要です。
口呼吸
鼻炎などで口呼吸になってしまうと常に口が開いており、前歯に対して内側にかかる力が弱くなり、歯に対して前方への力のみかかりやすく、出っ歯になりやすいです。これは鼻腔が狭くなることでもおこりますので鼻をしっかりと呼吸できる状態にしておくことが大切です。鼻が詰まっていれば口で呼吸せざるをえないわけですから。
口ゴボは自分で治せる?
口ゴボをご自身で治すのは難しいですが、口の周りの筋肉(口輪筋)が元々弱い傾向があり、口が開きやすい方が多いです。上記のとおり、口呼吸を治し、鼻で呼吸をできるようにすることがとても大切です。また口輪筋と言われる口元の筋力を鍛えることで、さらに悪化することを少しでも抵抗しましょう。
ご自身で色々と悩まれてもなかなか解決は難しいと思いますので、まずは一度相談に行かれてみてみてください。
口ゴボは直した方がいいの?
歯並びが悪く、非抜歯で矯正を希望され口元の突出感が残ることも了承され矯正が終わった後に、当初は抜歯しないで終わってよかった!と喜ばれる方も多いのですが、数年するとやはり抜歯した方がよかったかな!?と思われる方も実に多いです。つまり、見栄えをよくしたくて矯正するので、見栄えに重点をおいて矯正すべきでしょう。