監修 歯科医師 河合良治
親知らずとは?
歯列矯正を検討している方や、治療中の人々にとって親知らずは気になる存在でしょう。
この親知らずが歯列矯正にもたらす影響について、こちらのブログで分かりやすく説明いたします。親知らずをどうすれば良いか、どう付き合っていけば良いのかという判断材料として活用できることを願っております。
親知らず(第三大臼歯)は、通常18歳ごろから生えてくる永久歯です。親知らずは、通常の歯の列の一番奥に位置し、上下左右で合計4本生えてくることが一般的です。しかし、親知らずが全く生えてこない場合や、一部の親知らずだけが生えてくる場合もあります。
矯正治療と親知らずの関係
この親知らずがある場合は、歯列矯正治療を計画する際に非常に重要な要素となります。なぜなら、親知らずが生えることによって歯列全体に影響を及ぼす可能性があるためです。親知らずは通常、18歳以降から成人になって生えるため、矯正治療の計画段階で特に注意が必要です。親知らずがまだ生えていない場合、将来的に歯並びに影響を与える可能性があるため、矯正治療をする前の精密診断では親知らずの歯の位置や成長の状態を詳しく検査します。
特に、親知らずが歯列に圧力をかけることで、すでに整えられた歯が移動するリスクがあります。これは、せっかく綺麗に並べた歯並びを悪化させる可能性があるため、矯正治療中や計画段階での親知らずの管理が極めて重要です。
矯正治療を始める前に親知らずを抜歯することを推奨する場合も多くあります。
親知らずが既に生えている場合、その位置や状態が治療計画にどのように影響するかを検討します。歯がどのような角度で生えているか、他の歯に悪影響を与えているかどうかが評価されます。
参考情報:日本歯科医師会HPより親知らずについて
親知らずの位置と影響
親知らずは他の歯と同じように顎骨内で成長しますが、その位置や角度は個人差があります。正常にまっすぐ生えてくる場合もあれば、斜めに生えたり、水平に埋まってしまうこともあります。特に斜めや水平に生えてくる場合、隣接する歯に圧力をかけ、歯並びが乱れる原因となることがあります。
矯正治療中に親知らずが問題を引き起こす主な理由は、歯列全体に追加の力が加わることです。例えば、親知らずが斜めに生えてくると、その力が隣接する第二大臼歯にかかり、矯正装置で整えられた歯並びが再び崩れるリスクがあります。これにより、治療に影響し、治療期間が延びる可能性があります。
親知らずはどう影響する?
親知らずが歯列矯正中に及ぼす影響は、多方面にわたります。
親知らずが顎の中で成長する過程で、既にある歯並びに無理な力を加え、矯正治療によって整えられた歯列が再び乱れる原因となることがあります。
特に、親知らずが斜めに生えてくる場合、隣接する歯に悪影響を与え、矯正中に調整された位置が変わってしまう可能性が高くなります。
また、親知らずが生え始めるときの圧力は、矯正装置にも影響を与えることがあります。例えば、ブラケットが取り付けられている歯に対する追加の圧力によって、装置が緩むなど、場合によっては壊れることもあります。これにより、予定していた治療スケジュールに遅れが生じることがあり、矯正治療の全体的な期間が延びる原因となります。
そして親知らずは、痛みと不快感が生じることも大きな問題です。
親知らずが生える過程で引き起こされる炎症は、顎や口周囲に広がることがあり、これが矯正治療中の不快感をさらに悪化させることがあります。
特に、親知らずが部分的にしか顔を出していない場合、食べ物のカスや汚れが詰まりやすくなり、歯肉炎や親知らず周囲炎のリスクも高まります。
これらの問題を考慮に入れ、矯正治療を行う際には親知らずの位置や成長の様子を定期的にチェックし、必要に応じて抜歯を行うことが推奨されます。これにより、治療の効果を最大限に発揮して、治療期間をスムーズに進めることができます 。
関連情報:当院HPの歯のお悩み別治療案内より
矯正治療前の親知らずの抜歯
矯正治療を始める前に影響しそうな親知らずがあれば抜歯することが推奨される場合があります。これは、将来的に親知らずが歯列に悪影響を及ぼす可能性があるためです。特に、親知らずがまだ生えていない場合や、埋伏している場合には、今後の予測をして、事前に抜歯時期などを考慮しておくことで治療中のリスクを減らすことができます。
治療中の親知らずの管理
矯正治療中に親知らずが生えてきた場合、その管理が重要です。親知らずの成長状態を定期的にチェックし、必要に応じて抜歯を行うことで、治療の進行をスムーズにすることができます。また、親知らずが生える過程で痛みや不快感が生じた場合には、適切なケアと対処が求められます。
親知らずの影響を最小限に抑えるための対策
矯正治療中に親知らずが引き起こす問題を最小限に抑えるためには、いくつかの対策が必要です。
1. 定期的なチェック
矯正治療中は、親知らずの位置や成長状態を定期的にチェックすることが重要です。これにより、親知らずが歯列に悪影響を及ぼす前に対処することができます。
2. 適切な抜歯のタイミング
親知らずが問題を引き起こす前に適切なタイミングで抜歯を行うことが推奨されます。特に、矯正治療の計画段階で親知らずの位置や成長状態を評価し、必要であれば早期に抜歯を検討することが重要です。
3. 抜歯後の適切なケア
親知らずの抜歯後は、感染リスクを減らすための適切なケアが必要です。抗生剤の服用や定期的な洗口液での消毒、柔らかい食事を摂ることが重要です。また、抜歯後の回復状態をチェックするために、こまめな通院を行うことも大切です。
結局親知らずは、どうしたらいい?
矯正治療中に親知らずの問題に直面した場合、早めに適切な対処をすることが大切です。
まず、親知らずが問題あって、抜歯するかどうかの判断は、歯の位置、成長の度合い、及び既にある歯並びに影響を与えるかどうかで判断します。
例えば、親知らずが正常に生えている場合や、影響が少ないと判断される場合はそのままにすることも選択肢です。しかし、親知らずが斜めに生えて近隣の歯に悪影響を及ぼしている場合や、矯正治療の結果に影響を与える可能性が高い場合には、抜歯が推奨されます。
抜歯が推奨されるタイミングは、矯正治療の計画段階での評価に基づくことが多いですが、治療中に予期せぬ症状が現れた場合にも検討されます。
特に、矯正治療の早い段階で抜歯を行うことで、後の治療過程での問題を避けることが可能になります。
抜歯後のケアには、適切なお口のケアがとても大切です。
抜歯後は、特に初めの数日間は感染リスクが高まるため、指示された抗生剤や痛み止めの服用、定期的な洗口液での消毒、柔らかい食事をお勧めします。
さらに傷口が回復するまでにこまめな通院を通じて、抜歯部位の回復状態をチェックします。
このように矯正治療中の親知らずの管理は、計画的かつ慎重に行う必要があり、適切な判断とケアが重要です。これにより、矯正治療の成功を確実なものとし、期間中の不快感や合併症などを最小限に抑えることができます。
関連情報:当院HPの矯正歯科ページより
まとめ
親知らずは歯列矯正に大きな影響を与えることがあります。矯正治療において非常に重要な要素です。親知らずの位置や成長状態が歯列に与える影響を理解し、適切なタイミングでの抜歯と丁寧なケアを行うことで、矯正治療がよりスムーズに進行することが期待されます。親知らずに関する不安や疑問がある場合は、歯科医師に相談し、最適な対処方法を見つけることが大切です。
そのため、矯正治療の計画には親知らずの評価や精密検査がとても大切なことを理解していただけたと思います。適切なタイミングでの抜歯と丁寧なケアを行うことで、歯列矯正がより良いものになることを願っています。