執筆:歯科医師 河合良治
もし、「なんだか歯茎が赤くぽってりと腫れてきた!」という方は、お口からの注意サインです。特に歯茎の腫れは歯周病などお口の病気と深い関わりがあり、放っておくと最悪の場合には歯を失ってしまう原因にもなりかねないので早めに対処しましょう。
今回は歯茎の腫れがどんな時に起こるのか?そして改善方法についてお話ししていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
歯茎が腫れてきた!原因は?
歯茎の腫れにはいくつか理由がありますが、最も多いのがお口の中に汚れが残っているために歯茎が炎症を起こして腫れてしまっているという状態です。
お口の中は、歯磨きをしないでいると細菌の塊であるプラーク(歯垢)が溜まっていきます。プラークに潜む細菌は毒素を出しながら歯茎を刺激することで炎症を起こし、歯茎が腫れてしまうのです。
これは「歯肉炎」という状態になりますが、歯肉炎を放置していくと、今度は歯周病へと移行していき、炎症が原因で歯を支えている骨(歯槽骨)が溶けていき最終的には歯がグラつき抜けてしまうこともあります。
健康な歯茎はサーモンピンクで引き締まっている状態です。
歯肉炎の特徴は、歯茎がぽってりまたはブヨブヨと腫れていて、炎症のために赤くなっています。また、歯磨きの際に出血を伴うこともあります。
簡単な確認方法として、鏡の前で歯と歯の間にある歯間乳頭という逆三角形の形の歯肉を確認してみましょう。そこが丸くぽってりと腫れている場合は歯肉炎を起こしています。
歯茎の腫れを改善するには
歯肉炎により歯茎が腫れている場合、改善するために最も重要なことが「正しい歯磨き」です。お口の中にプラークが残っていなければ、歯茎に炎症は起こらず元の歯茎の状態に戻っていきます。腫れている時にさらに放置しているとさらに細菌が残って炎症は治りにくいです。
また、ご自身では正しく歯磨きをしているつもりでも、磨き癖や正しく歯ブラシの毛先が当たっていないこともありますので、一度歯科医院で歯科衛生士さんなどにブラッシング指導を受けてみるのをお勧めします。
ホームケアと併用して歯科医院での定期的なクリーニングを受けるようにすることで歯茎の腫れを予防することができます。
歯肉炎以外の歯茎の腫れの原因
歯肉炎以外にも歯茎が腫れることがあります。ここでいくつかその原因をご紹介していきます。
根尖性歯周炎
虫歯などなんらかの理由で、歯の神経の中に細菌感染が広がり、最終的に、歯根の尖端に炎症が起きて膿がたまった状態です。
この状態が長く続くと、膿が行き場をなくして歯茎から漏れ出すようになるため歯肉にプクッとした腫れを伴うことがあります。
腫瘍
歯茎の表面が白っぽく腫れている場合は、腫瘍の可能性があります。腫瘍には良性のものと悪性のものがありますので気になった時点で早めに歯科医院で相談しましょう。
歯茎の腫れを放置してしまうと?
歯肉炎により歯茎が腫れた状態を放置してしまうと、歯磨きのたびに出血しやすくなります。
中には出血することでびっくりしてしまい、しっかりと歯磨きをすることをやめてしまう患者さんもいて、さらに汚れが溜まり腫れと出血が続く原因になってしまいます。
最初は炎症が歯肉のみにとどまっている歯肉炎の状態から、炎症が歯槽骨など他の歯周組織へ広がり歯周病の状態になっていきます。
歯を支える歯槽骨が炎症により溶け始めてしまうと、失った骨は2度と元の状態には戻りません。
そのため、歯周病に移行しないように歯肉炎の状態でしっかりと正しい口腔ケアを行い健康な歯茎の状態へ戻していくことが重要です。
そのためには、ご自身でのホームケアと歯科医院でのプロケアを一緒に行っていきましょう。
参考:日本臨床歯周病学会
まとめ
歯茎の腫れの主な原因は、お口の中にプラークが溜まっていることで炎症が起こってしまうことです。ほとんどの場合が不十分な歯磨きになりますので、しっかりと正しい歯磨きの方法を見つけてセルフケアを行っていきましょう。
セルフケアだけでは取りきれない汚れもありますので、定期的に歯科医院でクリーニングを受けるようにしてください。当院でもクリーニングや検診のご予約をいつでも承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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