執筆:歯科医師 河合良治
家族や恋人に「歯ぎしりをしているよ」と言われたことはありませんか?また気づかない間に無意識に歯をギシギシやっていたりすることもあります。
音がするのが歯軋りではなく、歯軋りは音がしないこともあります。一般的に知られている歯ぎしりにはいくつか種類があり、対策をしないと歯や顎にダメージが蓄積していくことが多いです。今回は歯医者で行う歯ぎしり対策についてお話ししていきますので、ぜひ参考にしてください。
歯ぎしりの種類
歯ぎしりと言っても、歯をギリギリと擦り合わせる歯ぎしりだけではありません。
自分はしていないと思っていても、実は他のタイプの歯ぎしりをしているかもしれませんので、まずはどんな種類があるのか理解しておきましょう。
●グラインディング
上下の歯を左右にぎりぎりと擦り合わせるいわゆる「歯ぎしり」と呼ばれる口腔習癖です。寝ている時にしていることがほとんどで、歯が摩耗したり顎に大きな負担がかかっています。
タッピング
上下の歯をカチカチと合わせる歯ぎしりのことです。寝ている時にしていることがほとんどで、グラインディングとは違う「カチカチ」とした、細かい音がでます。歯の磨耗や欠ける、顎に負担がかかる原因になります。
クレンチング
上下の歯をぎゅーっと噛み合わせる、いわゆる「食いしばり」のことを指します。寝ている時だけでなく、起きている時でも集中している時、緊張状態にある時などにしていることがあります。クレンチングは、顎への負担が大きく顎関節症になりやすくなります。
歯医者での歯ぎしりの治療法
歯ぎしりを根本的に治す治療法というのは今のところ確立されていませんが、ただ、噛み合わせが悪いと歯軋りをする傾向がありますので、噛み合わせのチェックをお勧めします。噛み合わせ治療をしたら、歯軋りが減ったという人は実に多いです。無理もありません。高い歯があればそこは気になってしまいぎりぎりとやりたくなってしまうのです。
それ以外の理由としては、歯ぎしりがストレスや疲労からくることも多く、その原因を取り除かなくては改善されません。
そこで歯医者では、歯ぎしりから歯を守るために「ナイトガード」と呼ばれるマウスピースを作成し、寝る時などに患者に装着してもらうという対症療法をおこなっていきます。
厚めに作られたナイトガードを装着することで、歯への力を分散させ顎や歯に負担がかからないようにしていきます。
ナイトガード装着時は違和感を感じやすいと思いますが、厚さもさまざまなものがありますので歯科医師と相談しながらご自身に合ったものを作成してもらいましょう。当医院の場合は歯軋りのためというわけではありませんが、噛み合わせの治療を行うことで、顎周囲のさまざま負担が減ったという声をよくお聞きしますので、なにかあればご相談ください。
歯ぎしりをしているか確認する方法
日本人の70%が何らかの歯ぎしりをしていると言われていますが、ご自身で自覚している人がとても少ないです。
気づいた時には歯が磨耗して、痛みが出てしまっているという状態になっていることも多く、早めに歯ぎしりを自覚し対処することが大切です。
ここでは、歯ぎしりをしているかチェックする簡単な方法をご紹介しますので、ぜひご自身で確認してみましょう。
- 家族や恋人などに歯ぎしりをしていると言われる
- 朝起きると顎や頬の筋肉に疲労感や違和感を感じる
- 詰め物がよく欠ける
- 歯の先端や噛む面が真っ平らになっている
- 歯の根本が削れてきて知覚過敏がある
- 集中している時に上下の奥歯が噛み合っている
- 下の前歯の内側の骨が盛り上がっている
以上の項目に当てはまっていると、歯ぎしりをしている可能性があります。何も症状が出ていなくても、まずは歯科医院で一度診てもらうようにしましょう。
歯ぎしりは顎や顔にも影響する
歯ぎしりを長期間おこなっていると、歯だけではなく顎や顔にも影響してきます。
●顎関節症
歯ぎしりによって顎周りの筋肉が過度に緊張して痛くなることがあります。
その状態が長く続くと関節のクッションの役目をする「関節円盤」という軟骨が圧迫されて痛みを伴い、最終的には顎をスムーズに動かすことができなくなってしまいます。
口を開けるとカクカク音がなる、大きな口が開けられないなど最悪の場合は顎関節症を引き起こしてしまうのです。
●エラが張る
歯ぎしりをする際には、顔周りの筋肉、特に咬筋というエラの部分にある筋肉を酷使していきます。
長い間歯ぎしりをすることで、この筋肉が発達し、エラ部分が張り出してが顔が大きく見えてしまうようになります。
まとめ
歯ぎしりには3種類のタイプがあります。どれも歯や顎に負担をかけてしまい、歯が磨耗してしまったり、顎関節症になってしまったりと悪影響が出てきますので、早めに対処していくことが必要です。
ご自身が歯ぎしりをしているのか、歯科医師にお口の中を診てもらうとわかることもありますので、何も症状が出ていないくても一度検診にいってみましょう。
当院でも、歯科検診のご予約いつでも承っておりますので、お気軽にご連絡ください。
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