執筆:歯科医師 河合良治
少し前までは「歯医者は痛くなってから行く場所」と言ったイメージが持たれがちでしたが、近年オーラルケア(口腔ケア)が重要視されるようになり、自主的に定期検診へいく方が少しずつ多くなってきています。
今回は、歯科医院の定期検診ではどんなことをするのか?定期検診へ通うペースなどについてお話ししていきます。ぜひ、参考にしてみてください!
歯医者の定期検診ではどんなことをするの?
歯科医院の定期検診では、クリニックによって大きく違いますが、
主に以下の内容を行ってもらうと安心です。
- ・口腔内の観察(むし歯の有無、歯石や歯垢の有無、噛み合わせなど)
- ・レントゲン撮影(場合によって)
- ・歯周病の検査
- ・クリーニング
- ・歯磨き指導
- ・フッ素塗布
これだけのことをすると1時間以上は必要なことが多いです。また、定期検診は本来は健康保険外の扱いになりますので、事前に費用など確認しておくことをお勧めします。(歯周病になった人が長期的に管理する場合にはメンテナンスがカバーされることもあります。)
歯科医院によって内容はさまざまですが、口腔内の観察やクリーニングをメインで行っていきます。1つ1つ詳しく説明していきますね!
口腔内の観察
歯科衛生士や歯科医師が口腔内の観察を行い、前回の来院から変わったところがないか?新しいむし歯はできていないか?また、歯石や歯垢の有無などを観察していきます。
ご自身では見えないような場所まで細かく観察することで、初期むし歯を早期に発見したり、噛み合わせの問題などを見つけたりと早い段階で対処することができます。
レントゲン撮影
毎回ではないですが、むし歯になりかけている場所があった場合や久しぶりの来院の場合はレントゲンを撮影することがあります。(健康保険では虫歯や歯周病の疑いがないと撮影はできません。)
レントゲン撮影を行うことで目には見えない部分の観察をすることができ、隠れているむし歯や歯根(歯の根っこ)部分の観察、そして親知らずの状態などを確認することができます。(当医院のメンテナンスメンバーで通院中の方には2年に一度をどなたも撮影することを推奨しています。)
歯周病の検査
定期検診では、歯周病の検査を行うこともあります。プローブと呼ばれる先にメモリのついた器具を使い、歯と歯ぐきの境目の溝(歯周ポケット)の深さを測定していきます。
歯と歯肉の間には健康な場合約1mm〜3mmの溝があります。しかし、歯周病が進行していくと、この溝が4mm以上と深くなっていきます。
歯周病の検査を行うことで歯周病の有無や歯ぐきの状態を確認していきます。
定期検診で、あまり経験されたことがない方も多いようですが、歯周病の検査では必須。
よく我々が言っている、「予防歯科を誤解してただ歯石をとってるだけの方はおおいですが、それではダメ」というのはここからきています。
関連記事:「歯肉炎」ってどんな状態?歯医者ではどんな治療をするの?
クリーニング
こちらはほとんどのひとが体験されていると思いますが、
歯周病の検査を行った後は、専用の器具を使い歯のクリーニングを行います。
歯科医院では、超音波の力を使って歯石を砕いていくスケーリングと歯の表面を専用のブラシで磨き、バイオフィルムを破壊することで汚れの沈着を防ぐPMTCを行っていきます。
ご自身のブラッシングでは落とせない汚れまでしっかりと落としていきますので、歯周病やむし歯を予防し、さらには軽度の着色汚れなども落としていきます。
歯磨き指導(プラックコントロール)
健康なお口でいるためには、歯医者での定期検診とご自身によるホームケアの両立が重要になります。
そこで、歯科医院では正しい歯磨きができるように「歯磨き指導」(プラックコントロール)を行うことがあります。
その人の歯並びや磨きグセに合わせ、どのように歯ブラシをあてたらいいのか、フロスや歯間ブラシなどの清掃補助具などの使い方など詳しくご説明していきます。
場合によっては、歯垢染色剤(染め出し)を使い実際に磨けていない部分を目で見ることによって、歯磨きへの意識を高めていただきます。
(当医院では多くの方に予防プログラムを推奨してこの中で正しいプラックコントロール方法を身につけていただいています。)
フッ素塗布
こちらも歯科医院によって異なりますが、クリーニング後に「フッ素の塗布」を行うことがあります。
フッ素には、歯を強くし再石灰化を促す効果があるため、むし歯予防として昔から使われてきました。歯科医院では、高濃度のフッ素を塗布することができるので、むし歯予防にとても効果があります。
フッ素塗布は年2回以上定期的に継続して受ける必要があるので、3ヶ月〜6ヶ月に1回フッ素塗布を受けるようにしましょう。
フッ素の効果としては、乳幼児に定期的に継続して実施した場合、むし歯をほぼ半分に減少させたとの報告があります。また永久歯に対しては20〜30%の予防効果が報告されています。
フッ素について誤解されている方が多いですが、なんでも使用量が適切です。安全な範囲、むしろ健康増進ということで利用を推奨します。
参考:eヘルスネット
定期検診はどれぐらいのペースで行くべき?
一般的に定期検診というと1年に1度程度とイメージされがちですが、歯医者での定期検診は病気の発見だけでなく、歯石や歯垢を除去するクリーニングも行います。
そのため、3ヶ月〜6ヶ月に1度のご来院をおすすめしています。
むし歯や歯周病のリスクが高い方は、1ヶ月に1度などその人に合わせて変えていくことができますので、主治医の先生や衛生士さんに相談してみましょう。
まとめ
歯医者での定期検診では、その歯科医院によって大きく内容が異なります。自分がどの程度歯のリスク管理を行いたいか考えてから、歯科医院は選ぶようにしましょう。
本来は、むし歯のチェックだけでなく、歯周病の検査やクリーニングを行いお口のトラブルを予防していきたいとところなのですが、なかなかできていないこともあるようです。
よくある相談ケースは検診に行くたびに虫歯が見つかるです。
これはまだ定期検診のステージでなく、一段手前の予防プログラム(当医院の場合)を終わっていただいてからメンテナンスのステージになってもらうことをお勧めします。
ご自身では、取れないような汚れもしっかりと落とすことができますので、何も症状がなくても定期検診に行ってみてくださいね!
特にむし歯や歯周病は一度進行してしまい、歯や歯を支える骨が失われてからでは遅く、元の状態に戻すことが困難になります。早期に発見して、対応するためにも定期検診に積極的に通うようにしましょう。
当医院の場合は、定期検診に入る前に歯科ドックをおこなっていますので、そちらからお申し込みいただくと完全な検査が可能です。お気軽にご連絡ください。