執筆:歯科医師 河合良治
歯ぐきが赤く腫れ歯磨きをすると出血する、そんな症状がある方は「歯肉炎」になっている可能性が高いです。
歯肉炎は歯周病の前段階の状態で、適切なケアをしないと歯周病へと移行してしまいます。今回は、歯肉炎とはどんな状態なのか?歯医者でどんな治療を行うのか詳しくお話ししていきます。
歯肉炎とは?
歯肉炎(しにくえん)は、歯や歯と歯ぐきの間に溜まった歯垢(プラーク)や歯石が原因で、歯ぐきが炎症を起こしてしまっている状態です。
日本国内に歯肉炎及び歯周病の総患者数は398万3,000人もいるとの結果が出ており、成人の方の約8割が歯肉炎や歯周病になっています。
参考:日本生活習慣病予防協会
歯肉炎の症状としては、歯ぐき(特に歯のキワの部分)が赤くぽってりと腫れている、歯磨きなどで出血する、歯ぐきに違和感を感じるなどが挙げられます。
歯肉炎は炎症が歯ぐきにだけ起こっている状態なので、適切なケアをしてあげることで健康な状態に戻りますが、放置してしまうと歯周病へ移行してしまいます。
歯肉炎と歯周病の違い
歯周病は、炎症が進み歯を支えている骨(歯槽骨)を溶かしてしまっている状態です。そのため、むし歯のない健康な歯でも歯周病が進行することで、グラグラと揺れ始め、最終的には抜けてしまうといった恐ろしい病気なのです。
歯周病が進むと、歯ぐきから出血や膿が出る、口臭がキツくなる、歯ぐきが下がったようになる、歯がグラグラするなどの症状が出てきます。
- ・歯ぐきから出血する
- ・歯ぐきから膿が出る
- ・口臭がキツくなる
- ・歯ぐきが下がったようになる
- ・歯がグラグラする
歯周病が進行してしまうと、なかなか元の状態には戻すことができません。
しかし、歯肉炎の状態であれば適切なケアを行うことで元の状態に戻すことができますので早い段階で対応することが大切です。
参考:日本臨床歯周病学会
歯肉炎の治療はどんなことをするの?
では、歯医者では歯肉炎や歯周病に対してどのような処置を行っていくのでしょうか?詳しくご説明していきますね。
・歯周病の検査
まず、ご自身の歯ぐきがどのような状態なのか把握するために歯周病の検査を行います。方法としては、プローブといった先にメモリのついた器具で歯ぐきの中の深さを測っていきます。
歯と歯肉の間には健康な場合約1mmの溝があります。しかし、歯肉に炎症が起こると歯肉が腫れ、この溝が深くなります。これを「仮性ポケット」と言います。
歯肉炎の状態では、仮性ポケットができると2mm〜4mmぐらい深くなります。
歯肉炎が進行し歯周病の状態になると、炎症が広がっていき根の先の方へ移動していきます。これを「歯周ポケット」といい進行度によって4mm〜と、どんどん深くなっていきます。
参考:日本歯周病学会
当院での歯周病検査は歯科ドックがおすすめです>>歯科ドックのページはこちら
・クリーニング
歯科医院では歯科衛生士などプロの手によって行うクリーニングを「PMTC」と呼んでいます。
PMTCでは、専門の器具を使い歯石や歯垢(プラーク)を除去し、再び汚れがつきにくくするために専用の器具で歯の表面をツルツルに磨きながら、歯の表面についたバイオフィルムを破壊していきます。
ご自身の歯磨きでは、歯の間の汚れや奥歯の裏側、そして硬くなった歯石は除去することができません。
歯科医院でプロのクリーニングを受けることで歯肉炎や歯周病を予防することができます。
・ブラッシング指導
歯肉炎はお口の中に汚れが溜まってしまうことで起こります。正しい歯磨きの仕方を知ることでお口の汚れを大幅に除去することができるため、歯肉炎の予防にも繋がります。
歯ブラシの当て方や動かし方、またフロスや歯間ブラシなどの清掃補助具はそれぞれの使い方がございますので、歯磨きについて知りたいことがあればいつも通院されている歯科クリニックでご質問されてみてはいかがでしょうか。
当院では予防プログラムにおいて体系的にブラッシングの指導をしております。>>予防プログラムのページはこちら
歯肉炎を進行させないために歯医者での定期検診を
歯肉炎や軽度の歯周病の場合は、症状があまりでないため気づかずに放置してしまっているという方が多いです。そのため、気づいた時には中度から重度の歯周病へ進行してしていた、なんてことも少なくありません。
歯肉炎の状態から歯周病へ進行させないためにも、定期的に歯科医院で検診を受けることをおすすめします。
先ほどもお話ししたように定期検診では、むし歯の有無や歯周病の検査、クリーニングが受けられます。
ご自身では確認できないところまで細かくチェックいたしますので少なくとも3、4ヶ月に1度は歯科医院で検診を受けるようにしていきましょう。
当院では一連の治療終了後に定期的に歯科健診をさせていただいております。
関連情報:歯医者の定期検診はどんなことをするの?どのぐらいのペースで行くべき?
まとめ
歯肉炎は歯周病になる前段階の状態ですが、ご自身のホームケアと歯科医院でのクリーニングなどによるプロケアにより改善することができます。
しかし、放置してしまうと歯周病へと移行し、最終的には歯を支えている骨まで溶かしてしまう怖い病気となってしまいます。
ご自身のお口の状態を把握するためにも、定期的に歯医者へ通い歯肉炎のない健康なお口を目指しましょう!
当院では初診の方には歯科ドック、治療を終了された方にはメンテンナンスで歯周病のチェックを行っております。